前代未聞の“アナル裁判”に司法の判断が下った。10月に本紙が報じて話題となった同裁判は、元グラビアアイドルのA(34)が「勝手にアナルを写したDVDを発売され、耐え難い精神的苦痛を被った」として制作会社を相手取り、300万円の慰謝料を求めていた民事訴訟だ。注目の判決は12日、神戸地裁尼崎支部で下され、制作会社側に220万円の支払いを命じるものだった。だが、制作会社側は「他のメーカーにも影響が出るので控訴したい」と話しており、裁判は第2ラウンドに突入しそうだ。


 本紙既報通り、Aは2011年に米国で行われたDVD撮影時に出演条件でトラブルになったが、80万円の報酬でフルヌードを解禁。しかし「解禁条件に含まれていなかった肛門などの撮影が行われ、制作会社が制作・販売したDVDに自身の肛門が写っていた」として慰謝料300万円を求める訴訟を8月に起こしていた。主役が意図していなかった“アナルの解禁”の代償を求めた異例の裁判だ。


 争点となっていたのは本当にアナルが写っていたかどうか。制作会社側も明確にアナルをアップで撮影してはおらず、問題のシーンは本紙が確認してみても写っているかどうかは微妙だった。


 このため、7月に行われた証人尋問では出廷したAが自身の弁護士を相手に「アナルとは何ですか」「肛門のことです…」などと生々しい質疑応答を展開した。お尻を半分露出した瞬間のDVDの画像を見せられながら、弁護士が「肛門はどのあたりに写っているのでしょうか」と聞き、Aが返答に困り「下着の上の黒くなっている部分が肛門ですね」と畳み掛けられるなど、衝撃的なやりとりが続いた。


 この点について、判決は「原告の肛門が瞬間的に見える映像がある」とアナルが写っていたと認定し「本件DVDの制作が原告の人格権を損害する不当行為に該当することは明らか」とA側の主張を全面的に認めた。


 さらに「夫と子供のいる(当時)32歳の女性であり、本件DVDの発売以前にも露出の高いDVDに出演していたが、肛門などの映像を含むDVDへの出演は許可していなかったこと、肛門といった部分は体の中でも特に秘匿性の高い部分であり、これを商業目的で原告の意に反して不特定多数人に閲覧に供することは原告の女性としての羞恥心を著しく傷つけるもので、違法性が高いことが認められる」として慰謝料200万円と弁護士費用20万円を支払うよう制作会社側に命じた。


 司法アナリストの角田龍平弁護士は「弁護士というのは慰謝料を多めに言うもの。アナル契約違反の慰謝料で300万円を請求して判決で200万円という金額は全面勝訴に近い」としてこう解説する。


「アナルの金額の前例になるものはないので高いかどうかは分からないが、200万円は高額だと思う。判例もないので裁判官には難しい裁判になったと思う」


 判決を下した裁判官は女性だったことにも角田弁護士は注目した。


「アナルが出てくる映像を見慣れた男性裁判官だったら違った結果になったかもしれない。ただ、たかがアナルを写されたぐらいで“尻の穴が小さい”と思うかもしれないが、契約は順守しないといけない」


 制作会社側は12日「こちらの主張が認められなかったのは残念。お尻の穴が写る映像の判例ができたら他のメーカーにも影響が出るので控訴したい」と本紙に語った。


「今後、同様の裁判の判例になる可能性が高い」(角田氏)という「アナル=200万円」判決だけに、二審でどう判断されるのか、注目される。