今年、デビュー40周年を迎えた鳥羽一郎が新曲「北海の花」と「一本道の唄」の2曲のミュージックビデオ(MV)を同時に公開した。
 
 漁師一家に生まれ、自身も5年ほど遠洋マグロ・カツオ船に乗った経験を持つ鳥羽。1982年「兄弟船」でのデビュー以来、港町には欠かせない、数々の名曲を歌い続けている。

 そんな鳥羽の新曲「北海の花」は、今までにない新しい切り口の〝海の歌〟だ。一度は都会に夢を追いながら、故郷で船に乗ることを決意する男の姿を描いた一曲で、若い漁師への応援歌でもある。

 この曲のMVには、東北・石巻の若手漁師団体「フィッシャーマン・ジャパン」が特別出演。出演メンバーのほとんどが、この楽曲と同じ経歴を持つ若者で、彼らは東日本大震災を乗り越え、それぞれの漁業の現場から水産業を新3K(カッコよくて、稼げて、革新的な)産業にすべく、精力的に活動を行っている。

 監督・撮影は、震災を機に石巻に移住し、人々の姿や、日常のささいな幸せを撮り続ける写真家・平井慶祐氏。自身が手掛ける初めてのMV作品で、役場、漁師、地元の全面協力のもと撮影が行われた。この作品では、船上で働く漁師のリアルな姿が多く使われており、今までにない、迫力の映像が展開されている。

 そして、もう一本のミュージックビデオは、今年1月にリリースした40周年記念ソングの第一弾「一本道の唄」の新バージョン。同じく、写真家・平井氏から写真提供を受け実現したもので、宮城県石巻市渡波で70年に渡って漁業を営んできた佐々木力さんという漁師の引退式の写真でつづる作品だ。

 鳥羽は「力さんが歩んできた道、そして引退式のお話が、あの曲にぴったりだと思ったんだ。漁師の引退式…今後、浸透していったらおもしろいんじゃないかな。漁師たちが進水式で流す曲は『兄弟船』、引退式で流す曲は『一本道の唄』、なんてね(笑)。そんな風に自分の曲が、みなさんの人生の節目に寄り添っていけたら、こんなに嬉しいことはないね」とコメントしている。

 今回の撮影で、石巻の現場にも足を運び、若い世代の奮闘ぶりを目の当たりにした鳥羽は、「これからの水産業を担う若きフィッシャーマンたちの活動を、幅広い世代に応援していただきたい。そのひとつのきっかけとして、まずはたくさんの方にMVを見ていただけたらと思います」と語る。