【東スポ音楽館】デビュー9年目の演歌歌手・工藤あやの(27)が約2年ぶりにリリースしたシングルが「白糸恋情話」(作詞・原文彦/作曲・弦哲也)だ。金沢出身の小説家・泉鏡花の小説「義血侠血」に着想を得て、金沢を舞台に悲恋を歌った本格演歌だ。

 ――この作品に出会ったきっかけは

 工藤「作詞の原先生が数年前に『義血侠血』を読んで、この詞を書かれたそうなんです。原先生はこの詞を『しかるべき時にしかるべき人に歌って』と私のディレクターに託したんです。私も2年ぐらいシングルを出していなかったのですが、弦先生が『小説を舞台にした作品、何かを演じて歌うような作品をあやのには歌わせたい』と話したところ、こういう詞があると出されたのが『白糸恋情話』だったんです」

 ――初めてこの曲をもらった時の印象は

 工藤「実は歌手を辞めなきゃいけないかと悩んでいた時期があったんです。周りの信頼を失ったり、実力も結果もついてこなかったり…。シングルも出せなかったとか、モヤッとしていたんです。そんなタイミングでこの楽曲をいただいたんですが、義理と人情の世界観の歌で、もらった瞬間に涙がこぼれてきました。これに人生を賭けよう、これが最後になってもいいっていうくらい命をかけよう、って覚悟を決めました」

 ――今までは歌謡曲風の曲も多かったが、今回は本格演歌

 工藤「この楽曲をもらえたのは、実力がついてきたというよりも、“実力がついてきたね”と言われるように努力してきたからかな、と思ってます。こういうスローテンポな曲は“歌力”が試されます。私にできるのかって不安もありますが、できるようにならなくてはいけないと、一生懸命練習してます」

 ――レコーディングはいかがでしたか

 工藤「歌ってみたら、弦先生から『完成させすぎないでくれ』って言われました。情念とか恋愛の深みを歌うのではなく、今の素のまま、27歳の工藤あやのが歌う声を形にしたいから、ナチュラルに歌うようにと言われました。私が年を重ねるとともにこの曲も成長していく。そんな作品にしていければいいかなと思ってます」

 ――今年1年はどんな年にしたい

 工藤「たくさんの人に『白糸恋情話』という世界を届けたいです。楽曲が耳に届くのもうれしいんですけど、楽曲だけではなく、工藤あやのという人物、表情、所作から、一つの舞台、映画を見ているような気持ちになってほしいなと思っています。だから今年はみんなに見て、聴いてもらいたいですね」