前人未到の50回出場を果たしたのを機に、大みそか恒例の「NHK紅白歌合戦」から昨年限りで卒業したはずの“御大”北島三郎(78)に対し、なんとNHKが出場のオファーを出していたことが本紙の取材で分かった。北島は先週発売された「週刊文春」で、紅白への思いとともにあらためて「もう(紅白に)出ることはない」と断言したが、なぜNHKは北島にオファーしたのか? 舞台裏を追跡した――。

 1962年に歌手デビューした北島は63年、「ギター仁義」で紅白に初出場。昨年、出場50回を区切りに自ら紅白からの卒業を発表した。


 北島は紅白出場歌手最多となる13回のトリを務め、うち大トリも美空ひばりさん(享年52)と並ぶ最多の11回を数える。


 今年1月の日本クラウン「平成25年度 ヒット賞」贈呈式で北島は「耳で聴く紅白ではなく、目で見る紅白になったらどうだ。『楽しかった』『きれいだった』と言われるような紅白になればいいと、NHKの仲間たちに話した」と明かし、「合戦ではなく“歌の祭典”とかでやってくれればいいかな」と期待を寄せた。


「週刊文春」のインタビューでも「昔は『聴く紅白』だったけど、最近は『観る紅白』になっている。だったら、いっそのこと『観る紅白』をもっと突き詰めて、全世界に向けて『どうだ、日本のアーティストはかっこいいだろう。いい歌がたくさんあるだろう』って見せつけたらいいんだよ」と提言。最後に「もう出ることはないけど、今年の紅白、俺はどこかでちゃんと見てますよ!」と結んだ。

 改めて“完全卒業”を宣言した格好だが、そんな北島にNHK側が紅白出演のオファーを出していたというから驚きだ。


「実はNHKは3回ほど北島の自宅を訪れ、紅白について話し合いの場を持ったんです。そのやりとりの中で担当者は『北島さんの自宅から中継という形で、歌を届けるお気持ちはありませんか?』と出演オファーを出していたんです」(NHK関係者)


 昨年の紅白で総重量3トンの龍と風神雷神の巨大セットに乗り、盛大なお祭り騒ぎで最後のステージを終えた北島。にもかかわらず翌年、再び出演オファーを出すとは考えづらいが、NHKサイドの考えは違った。


「あくまで“紅白のステージからの卒業”ということで、“特別枠”での出演は可能だと判断したようです。北島さんがトリで歌う曲といえば、どうしても『まつり』『風雪ながれ旅』『帰ろかな』などの代表曲になってしまいます。NHKとしたら、最近の北島さんの曲をお茶の間に届けてほしいという思いもあったようです」(同)


 自宅から生中継という形のオファーになった理由もそこにある。北島が8月にリリースした最新シングル「路遥か」では、愛弟子で娘婿でもある北山たけし(40)との「初の親子デュエット」で話題を集めている。


 NHKサイドにしたら「貴重な親子デュエットを放送できれば高視聴率が期待できる」という思いがある。北島も「自分の後継として北山を紅白に出したい」という気持ちがあるのは間違いない。特別枠での自宅生中継というサプライズは、ある意味で両者の思いが合致している、とも言えるだろう。


 ただ「週刊文春」で「もう出ることはない」と言ったように、北島はNHKの要望に応えることはなかった。


「紅白の演歌枠は紅組7人、白組5人で、白組の演歌枠は1人減った。“北島枠”がJ―POP枠に奪われた格好ですが、北島自身も枠に入るべき若手演歌歌手が『伸び悩んでいる』と感じたよう。むしろ期待に応える若手が出現すれば、安心して特別枠での出演オファーを快諾したかもしれません」と芸能プロ関係者は指摘する。


 卒業理由について北島は「若い人にバトンを渡そうと思った」と語ったが、残念ながら今年は演歌界の若手には渡らなかった。来年こそ北島枠を奪う人材が誕生し、卒業生枠でサブちゃんの雄姿を見たいところだ。