天才子役・芦田愛菜(9)主演で15日にスタートしたばかりの日本テレビ系連ドラ「明日、ママがいない」が、いきなり激震に見舞われた。児童養護施設が舞台の同ドラマに対し、熊本市の慈恵病院などが会見を開いて「養護施設の子供や職員への誤解偏見を与える。人権侵害だ」と放送中止を申し入れたのだ。これに対して日テレは、対応に追われながらも「放送継続」の姿勢を示したが、事態は深刻。前代未聞の放送中止に追い込まれる可能性も出てきた。

 親が育てられない子供を匿名で受け入れる通称「赤ちゃんポスト」。今回のドラマは様々な理由で親と離れ離れになり、児童養護施設で暮らす“母なき子”たちの物語だ。15日放送の初回視聴率は14・0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。好スタートを切ったかに見えたが…。

 16日、日本で唯一、赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」を設置する慈恵病院は同ドラマに対し「養護施設の子供や職員への誤解偏見を与える。人権侵害だ」と表明。記者会見した産婦人科部長の蓮田健氏は、同ドラマで施設の職員が子供たちを殴り「お前たちはペットだ!」と暴言を吐くシーンがあったことなどを挙げ「施設の現状を知る視聴者は少ない。フィクションといっても誤解されかねない」と述べた。

 芦田演じる主人公の少女は、赤ちゃんポストに預けられていたという設定で「ポスト」というあだ名が付けられていたが、これについても蓮田太二院長は「同じ立場の子供が聞いたらどれだけ傷つくか」と厳しく批判。日テレに放送中止を求めるとともに、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会への審議申し入れも検討中だ。

 放送開始早々、とんでもない事態となったが、日本テレビ総合広報部は「ドラマは子供たちの心根の純粋さや強さ、たくましさを全面に表し、子供たちの視点から『愛情とは何か』を描くという趣旨のもと、子供たちを愛する方々の思いも真摯に描いていきたい」とコメント。2話以降も予定通り放送するとし「ぜひ最後までご覧いただきたいと思います」と結んだ。

 とはいえ、大慌てだったのは、日テレでもマスコミ対応に追われた広報部とコンプライアンス関連の部署。ドラマ制作関係者の中には「いい宣伝になったのでは?」と話している者までいたというから、事実なら批判にさらされそうな話だ。

 確かにこれまで似たようなケースとして、2005年放送の天海祐希(46)主演の連ドラ「女王の教室」もその過激な内容をめぐり、スポンサー各社に視聴者から抗議が殺到。提供クレジットの表示を自粛するなど、大きな話題となったが、結果的にそれが“いい宣伝”となり、視聴率は騒動後10%以上も上昇したことがあった。

 だが、今回はそうはいきそうもない。慈恵病院だけでなく、全国約600の施設で作る全国児童養護施設協議会も同様の抗議を日テレにする方針。同協議会は「現在、役員の間で見解をまとめており、近日中に皆さんにご報告します」と語っている。

 別の民放関係者は「今後、共鳴するかのように全国の児童施設から同様の意見が寄せられることは間違いない。『女王の教室』の時と同じように考えていたら大変なことになりますよ。すでに番組スポンサーの中には、今後の展開を予期し、提供中止を検討している社もあるようです」。

 今回ドラマを制作しているのは日テレの子会社である「AXON」。同社は過去にも東海テレビ「幸せの時間」(フジテレビ系で放送)を制作し、「あまりにも性描写が露骨すぎる」とBPOから勧告を受けた過去がある。「日テレの大久保社長は読売新聞社出身でことさらコンプライアンスに厳しい人物だけに、問題が大きくなっていけば局プロデューサーの処分やAXONの担当者も更迭されることになるだろう。制作スタッフはびびりまくっていますよ」(事情通)

 また、別のテレビ関係者も「フィクションといっても『赤ちゃんポスト』を題材として扱う時点で、慈恵病院に配慮すべき。にもかかわらず、脚本家やスタッフが熱心に同病院を訪れたという報告はない。最大の原因は取材不足。セリフやあだ名への配慮のなさにつながっているのでは」と語る。放送中止に追い込まれ「あしだ(芦田)、マナ(愛菜)がいない」という事態になれば、シャレでは済まない。