AKB48の53枚目シングル「センチメンタルトレイン」(9月19日発売)のミュージックビデオ(MV)が23日、初解禁された。

 6月16日に行われた「AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙(第10回AKB48世界選抜総選挙)」の結果を受けた新曲は、本来なら1位に輝いたSKE48・松井珠理奈(21)がセンターとして、MVの主役を飾るはずだった。しかし、体調不良による長期休養のためセンター不在でのレコーディング&MV撮影になった。

 センターの帰還を待ちわびる格好となった異例の“未完成MV”。珠理奈の出演部分は絵コンテやCGで表現されており、元気に戻ってきた際には追撮・再編集の上、完全版を制作する予定で、シングル封入のシリアルナンバーで「完全版」が視聴できるよう対応を検討している。

 絵コンテは、漫画家・志村貴子氏(「放浪息子」「青い花」「こいいじ」など)が担当。通常の絵コンテを超えた独特の繊細なタッチで、珠理奈の表情の変化を描いている。

 MVは付属の女子高併設の女子大が舞台。普通の学園生活の中に現れた不思議な転校生との触れ合い、遠くに離れていてもつながり合う心などが描かれ、全体にはかなさや寂しさが漂う。どこまでもセンチメンタルな仕上がりになっている。

 1カットのみ珠理奈が登場しているが、これは「桜の木になろう」(20枚目シングル、2011年発売、是枝裕和監督作品)からのもの。あどけなさが残る7年前、13歳の姿を見ることができる。

 珠理奈に代わり、総選挙2位のSKE48・須田亜香里(26)がMVについてコメントを寄せた。

「ダンスシーンの撮影の際は後々、CGで珠理奈さんを表現できるように、振り付けの先生に珠理奈さんのポジションに立っていただいたり、撮り方をいろいろと工夫した撮影でした。今回、このMVを見て私にはまるで『幻』のように、そこにいないはずの珠理奈さんの姿が見えて…、目を疑って、つい巻き戻してしまいました。このMVを見てくださった方も(珠理奈さんを感じ取ることができて)びっくりするんじゃないかなと思います」

 ドラマのシーンについては「現実の私たちとリンクする部分があって、珠理奈さんの問いかけに対してはドラマのワンシーンとはいえ、全てアドリブで、現実の私と珠理奈さんとの関係性のまま答えています。全く台本のない撮影だったので、リアルな私たちを感じていただけると思います」と話した。

 さらに心配するファンに向けて「珠理奈さんのファンの方は、もしかすると少し寂しい気持ちになるのかもしれないですが、珠理奈さんがそこに確かに『存在する』MVになっていますので、より多くの方に見ていただきたいです。『完全版はどうなるんだろう?』ということも含めて、一本で2度楽しんでいただける作品になっていると思います」と呼びかけた。

 撮影を担当した高橋栄樹監督は「前代未聞でした。それなりに長い監督生活の中でも、今回の『未完成』MVのような作品は一度も作ったことがありませんでした」と率直な心境を告白。その上で「松井珠理奈さんが休養されるので、MVにご出演できない(絵コンテになる)と初めてお聞きした時に無謀ですが、直感的に『それならばあえてドラマMVにして、松井さんを主人公に作るべきだ』と思いました」と意図を明かした。