セクハラや情報漏えいスキャンダルの渦中にあるノーベル文学賞の選考主体スウェーデン・アカデミーは4日、今年の文学賞の発表を見送り、来年に先送りすると発表した。文学賞で受賞者が決まらないのは1940年代以降初。選考主体のスキャンダルによる見送りは極めて異例だ。アカデミーは、スキャンダルで傷ついた信頼の完全な回復に時間が必要と説明した。

 発端は、アカデミーのメンバーだった詩人カタリーナ・フロステンソン氏の夫、写真家ジャンクロード・アルノー氏によるセクハラや性的暴行疑惑。アルノー氏が妻から得た受賞者名を事前に漏えいした疑惑も浮上し、アカデミーの対応の甘さなどに反発したメンバーが次々に辞意を表明した。

 文学賞は例年10月に受賞者が発表され、12月10日に授賞式が開かれる。日本人にとってはこの数年「今年こそは」と期待されていた人気作家の村上春樹氏(顔写真)の今年の受賞がなくなったことは残念。特に同氏のファン“ハルキスト”からは「寂しい」と落胆の声が上がった。

 アカデミーによる結果発表のインターネット中継をハルキストらが見守るイベントは、毎年10月の恒例行事となっていた。ハルキストが集う東京都杉並区のカフェ「6次元」店主のナカムラクニオさんは自身もファンで、イベントを主催してきた。「春樹さんの受賞発表がないのは少し寂しい」とがっかりしつつ「(来年まとめて2人の受賞者を発表するという方針に)それはそれでうれしい」と語った。

 日本人の受賞は1968年の川端康成と94年の大江健三郎氏の2人。その後は途絶えているが、昨年は長崎県出身の日系英国人小説家のカズオ・イシグロ氏が受賞し、話題を集めた。一昨年は米シンガー・ソングライターのボブ・ディランが文学賞に決まったことも驚きとともに大きく報じられていた。