上方落語協会の次期会長候補者選挙が26日、大阪市の天満天神繁昌亭で行われ、落語家・笑福亭仁智(65=しょうふくてい・じんち)が最多票を獲得した。5月末に行われる理事会・総会で承認されれば、仁智が正式に7代目の会長となる。

 これまで8期、会長職を務めた桂文枝(74)が、今期をもって職を辞する意向を示したため、誰が後任となるか注目が集まっていた。

 仁智は「今日は候補が決まっただけ。たくさん入れていただいてびっくり。嫁はんにどう言おうかと思いますけど、前向きな人やから『頑張りや』って言われると思う」と話した。

 この日、現会長の文枝の姿はなく、言葉を交わすことはなかったというが、後を引き継ぐことには「大変だと思うが、これまで文枝会長に長いことやっていただいて、大きくしてもらった。盤石の状態になっているので、流れは大きく変わることはない」と現状路線の継続を示唆した。

 笑福亭一門からの会長は、仁智の大師匠にあたる故六代目笑福亭松鶴さん以来となる。師匠の笑福亭仁鶴(81)には「今から報告に伺います。松鶴師匠以来の笑福亭(の会長)なので、そんな話をするかもしれません」と言い残して、繁昌亭を後にした。

 仁智は1971年、仁鶴の一番弟子として入門。師匠譲りの古典落語はもちろん、文枝から勧められる形で始めた創作落語の数も100本を超える。とりわけ「スタディーベースボール」「源太と兄貴」は、上方落語評論家から高い評価を受けている。

 在阪芸能関係者は「良くも悪くも目立つ存在だった文枝会長を、副会長の立場で支えた実務型。今回、有力候補に挙げられてはいたが、文枝さんほど知名度がないので(次点だった月亭)八方さんを推す声も少なくなかった」と明かす。

 だが、いざフタを開けてみると、次点の倍近い票数を獲得。関係者は「収まるところに収りましたね。勉強熱心で人柄もいい。女性問題も聞いたことはないので、前会長のようなスキャンダルはないでしょう」と、文枝の騒動を引き合いに笑った。