円谷プロダクションは24日、ウルトラマンシリーズ作品の日本国外での利用権について、米国で円谷プロ側の主張を全面的に認める判決が出たことを発表した。泥沼裁判に終止符を打つような結果に本物のウルトラマンも安心している。

 タイの実業家サンゲンチャイ・ソンポテ氏が1996年、円谷皐氏との間で76年に取り交わしたとされる「契約書」を円谷プロに持参してきたことから問題は始まった。

 たった1枚の契約書のコピーには、円谷プロの当時の代表で95年に死去した円谷皐氏が「ソンポテ氏にウルトラQからウルトラマンタロウまでの6作品を日本以外全世界で無期限に利用許諾する」という趣旨の内容が記載されていた。

 これを根拠として、ソンポテ氏や同氏から契約書に基づく利用権を継承したと主張する米ユーエム社は、円谷プロと日本、タイ、中国、米国で作品などの利用権を巡って長い争いを続けてきた。

 会見で円谷プロは、米カリフォルニア州の連邦地裁が18日、円谷プロに権利があると認めたことを発表した。契約書などを調べた結果、真正な契約書ではないと判断されたという。現在も中国とタイでは係争中だが、米国の裁判はこれまでの裁判以上に新事実を積み重ね、他国の裁判にも影響力が及ぶという。円谷プロは「今回の米国での全面勝訴判決は、これまでの長い係争のいわば集大成」と事実上の勝利宣言を掲げた。

 これを機に、他国と抱えている問題の解決が進展することが期待されている。最も新しい“火種”は、中国のCG会社が勝手に製作して昨年公開されたCG映画「ドラゴンフォース 帰ってきたウルトラマン」の問題だ。上映阻止を求めてきた円谷プロは今後も「断固たる措置を継続する」としている。

 この偽ウルトラマン映画の製作発表では、アゴがとがったマスクをかぶり、ムキムキの体にボディーペインティングを施した“裸”の男性が登場。本家では絶対にありえない演出は論外と物議を醸した。

 会見に出席した円谷プロの森晃氏は「中国のファンからも『中国人の恥だ』『円谷プロのウルトラマンがウルトラマンだ』という声がSNS上で届いている」とあきれている。

 作品を見た感想も森氏に聞いてみた。意外なことに「見た限りではそこまでウルトラマンがひどい扱いをされていない」としたが、やはり「容姿がいけない」と指摘する。森氏は「ウルトラマンの造形は普遍的なヒーロー像。ムキムキの筋肉は、はやりに乗じて出したように思える」と語る。

 だが、中国ではそんなパクリ映画が1か月のロングランを記録したという。「中国では映画は人気がないと公開1~2日で打ち切られることもある。その中で1か月ですからね」と複雑な悔しさをにじませる。

 中国での裁判(2004~13年)では政治・外交的な背景が色濃く漂った。中国での契約書の真贋訴訟は一審は円谷プロが勝訴したものの、二審で逆転敗訴。森氏は「当時は尖閣諸島の問題と同じ時期だった。現地の訴訟代理人に話を聞くと『何か違う理由だったのではないか』ということだった」と話す。

 尖閣諸島をめぐり、日中がバチバチに火花を散らしていた。そんな時期に、中国の裁判所が日本に不利な判断をしたのかもしれない…。そんな雰囲気が円谷プロ内では醸成されていたという。外国での裁判は一筋縄では進まない。今回の全面勝訴はそんな状況でも円谷プロにとって光明となりそうだ。