徳島で勃発!リアル「平成狸合戦ぽんぽこ」

2018年04月18日 11時00分

金長神社は取り壊されるのか

 徳島県小松島市にある「金長(きんちょう)神社」が、人気のパワースポットとなっている。化け狸の金長を祭っており、長年地元民だけでなく徳島県民に親しまれてきた。スタジオジブリのアニメ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」(1994年)にも登場した。その金長神社がなくなるということで、騒動になっている。市が一帯の土地を買い取り、再開発するため、同神社は取り壊されるというのだ。妖怪を祭る神社を守りたい住民が市と対立…まさにリアル「平成狸合戦ぽんぽこ」となっている。

 徳島県民にとって金長狸は子供のころから親しんできたキャラクターだ。祖父母から孫へ、親から子供へ、口伝えで物語が受け継がれている。俗に“阿波狸合戦”といわれる伝説だ。

 その物語は、徳島全域に権勢を誇る六右衛門狸に金長狸が弟子入りするも、人間への恩返しのために六右衛門のもとを去る。小松島への帰路の途中、金長は六右衛門の刺客に襲われたが、窮地を脱する。このことにより反六右衛門の勢力が金長の下に集い、六右衛門対金長の狸合戦が行われる。

 六右衛門を倒した金長だが、合戦での傷がもとで死んでしまう。その金長を祭っているのがこの神社だ。徳島県民にとって心の原風景だという。

 徳島県出身で妖怪に詳しい作家の山口敏太郎氏はこう語る。

「50代の私は少年時代より徳島市内で生まれ育った祖母から金長狸の話を聞いてきました。徳島のソウルフードともいえる金長まんじゅうはこの金長狸の伝説に基づいています。その金長神社が、取り壊されようとしているのです。(社殿が隣接する)小松島市中田町の市営グラウンドは防災公園として再開発される準備が進んでおり、市有地となった場合、法律的には宗教施設である金長神社は取り壊される運命にあるんです」

 しかし、住民感覚からすると忍びないのだろう。現在、地元住民が取り壊しに対して異議を唱えている。

 山口氏も疑問を持ち、今月28日に金長神社の民俗学的な意義を述べ、観光戦略的に金長神社の存続を図る講演会を行う予定だという。

「南海地震を想定した上で、防災公園が必要なことは論理的には理解できます。しかし、それによって徳島県民の心の支えでもあった金長狸のゆかりの地を破壊すべきではないでしょう。防災公園の一角に神社が存在することが不可能であれば、代替地を用意して移動することは可能だと思います」と山口氏。

 金長狸は「平成狸合戦ぽんぽこ」にも出てくる人気キャラクターで、神社には全国からジブリファンが参拝している。またパワースポットとして、御朱印を集める御朱印ガールも多数訪れている。

 山口氏は「この経済効果を小松島市は考えるべきです。メジャーな観光施設を壊すのではなく、交通の利便性の良い場所に移転し、観光資源として、伝説の史跡として、存続を図る方が経済戦略としては合理的かつ論理的です」と語る。

 ここ20年ほど、米国の観光概念として“クリプトツーリズム”が広がってきている。都市伝説や未確認生物で町おこしをする観光学の一種だ。十数年前に山口氏が翻訳し、日本に紹介した。山口氏がプロデュースしたものでは、岐阜市で口裂け女をモチーフとした柳ヶ瀬のお化け屋敷や、千葉県銚子市で銚子電鉄とタイアップした妖怪スタンプラリーとUFO召喚イベントなどを展開し、観光客を集めることに成功している。

「小松島市は金長狸という観光戦略における強力なキャラクターを保持しながら、そのキャラクターを使用せず、逆に破壊しようとしていることに疑問すら感じます。どうにか金長神社を近くに移動し、徒歩で数か所の観光地を回れるようなモデルコースの構築など、地元に利益をもたらす観光の切り札として起用する方法はあります」と山口氏。

 市が発展するような仕掛けを作ることが、双方が丸く収まる妙案だと言えよう。

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