音楽教室からの著作権使用料徴収を容認した文化庁長官の裁定を受け、日本音楽著作権協会(JASRAC)は、一部の音楽教室を対象として4月1日分の使用分から徴収を開始した。一方、徴収方針に反対する教室側の団体は反発している。

 徴収の対象は楽器メーカーや楽器店が運営する教室で、当面は個人運営教室は除く。ヤマハ音楽振興会など約250の事業者が参画する「音楽教育を守る会」は、徴収権限がないことを確認する訴訟を東京地裁に提起している。これらの事業者には徴収開始を通知するものの、個別の督促は控えるという。

 使用料の支払い方式は選択制で、年間の受講料収入の2・5%と定める年額か、受講者数や受講料に応じた月額、または曲別の3通り。9月末までに年額契約を選ぶと、1年間に限り使用料10%を割り引くという“ニンジン”もぶらさげられた。

 JASRACの浅石道夫理事長は「音楽教室からの徴収は2003年から交渉しており、私たちの主張は行政によって認められた」と早々と勝利宣言。行政の裁定という「第1ステージ」で敗北した「――守る会」側は「第2ステージ」の裁判に期待を寄せる。

「音楽教室は50年代には始まっている。著作権法は70年から施行されており、なぜ今になって申し込んできたのか疑問」と語るのは「守る会」事務局の斉藤誠氏だ。司法判決が出ない段階での徴収には「JASRACは司法判断が出てからさかのぼって請求しても損はしない。早期に実績を作りたくて、必死になっている」と反論する。

 国際日本文化研究センターの山田奨治教授(情報学)は「法的根拠はあるので一方的にJASRACを責めるわけにいかないが、文化のために奉仕している感覚がない」と指摘する。徴収が進めば、経営難に陥る教室が増え、その補填は生徒の月謝増につながりかねない。最終的には「音楽人口の減少」が懸念されているというわけだ。

 斉藤氏は「教室の利益率は20~30%もない。わずかに1桁の運営をされているところも多い。2・5%はとんでもなく大きい」と語っている。