天才棋士への便乗なのか!? 将棋の藤井聡太六段(15)は28日、大阪市の関西将棋会館で行われた“中学生棋士”として最後の対局、王将戦1次予選で井上慶太九段(54)に敗れ、2017年度の全ての対局を終えた。今年度の記録全4部門(対局数、勝数、勝率、連勝)で1位を達成。61勝12敗で勝率8割3分6厘は歴代4位タイになる。地元愛知での藤井フィーバーは冷めることなく、月末には各表彰式が控えている。その中でも、同県からの表彰で、ひと騒動起きていた。

 20日に名古屋大教育学部付属中の卒業式を終えた後も、法令上は31日まで中学生の藤井六段。最終学年の17年度は、昨年6月の最多記録29連勝達成のほか、先月17日には朝日杯オープン戦準決勝で、将棋界の“生ける伝説”国民栄誉賞受賞の羽生善治竜王を撃破した末に史上最年少の棋戦初優勝を果たすなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの一年だった。

 28日の井上九段との対局は137手で敗れ、1月からの連勝は16で止まった。中盤、形勢有利とも伝えられたが「得意の(矢倉の)形でいきました。一方的な将棋にならないよう、粘り強く指しました」と言う井上九段の前に屈した。

 久しぶりの敗戦に藤井六段は「初めて指した形だったんですが、感覚がつかめていなかった。早い段階で形勢を損ねてしまい、どう粘るかという将棋になってしまいました」と振り返った。連勝ストップには、普段から「意識していない」と話しているだけに、「仕方がないことかなと思います。まずは内容の方をしっかり反省したい」と前を向いた。

 そんな藤井六段には、30日に地元での表彰式が控えている。出身地の愛知県瀬戸市から市民栄誉賞を受けるほか、県からは特別表彰される。

 だが、後者の県の特別表彰について、藤井人気への便乗気配がうごめいているというから、穏やかではない。

「大村秀章知事が人気取りの道具にしようとしているんです。もともと大村知事は藤井六段が29連勝を達成した段階で、国で言えば国民栄誉賞に相当する『愛知県名誉県民』で表彰しようとしていた。ただ、過去の表彰者の功績とバランスが取れないとして白紙になった経緯がある。その後もたびたび藤井六段を表彰しようという動きがあっただけに、今回の特別表彰も藤井六段に最も注目が集まるタイミングに便乗した、知事の人気取りではないかという見方が広がっているんです」(地元事情通)

 大村知事は藤井六段について、県が表彰する称号としては最高峰とされる「愛知県名誉県民」を連発してきた。過去7人の表彰者のうち、なんと6人が大村知事時代と突出しており、地元報道関係者も「正直、あまりに多すぎて、すごさが伝わらない」と困惑顔だ。

 昨年7月、本紙は藤井六段が「名誉県民」とは別の「愛知県県民栄誉賞」で表彰される可能性を報じたが、これもある事情から見送られたという。同関係者は「県民栄誉賞は大村知事になってから新設されたもので、第1号はフィギュアスケートの浅田真央ちゃん。藤井六段も内々に検討されたが、実績のある真央ちゃんと、将棋界でこれからタイトルを取るであろう藤井六段を同格にするのはいかがなものか、と白紙になった。2人目の受賞者は元中日ドラゴンズの監督で1月に亡くなった故星野仙一さん(享年70)が死後に受賞しています」。

 自ら「まだまだ、これから」と精進を誓っている藤井六段に、地元のこんな表彰騒動は決して喜ばしいことではない。

 もともと国民栄誉賞も、時の政権の人気取りの要素が取りざたされているが、今後の将棋界を担う藤井六段をめぐっても“便乗政治家”が出てくると思うと、気が滅入りそうだ。