【鈴木涼美・連載最終回】モテない女医の言葉が象徴 複雑すぎる女の価値観

2018年03月31日 10時00分

「逆年功序列」など女性ならではの世界に興味を持ち続ける鈴木涼美氏

【東大大学院出身の元セクシー女優・鈴木涼美「ワタシの値段」(最終回)】日本のおじさんたちに根強く残る「素人神話」というのが、私が「オンナの値段」という本を書くきっかけにもなりました。

 私なんかはAVデビューしましたが、ド~ンと売れたタイプではない。こういう女優が一番高いギャラをもらえるのはデビューのときなんです。後は徐々にギャラが下がっていくのが通常パターン。これは風俗で「初・初」の女の子が一番価値があると話したのと同じで、ここに根付いているのが「素人神話」なんです。

 でも、考えてみるとちょっと変ですよね。経験を積むほど、熟練するほど価値が下がっていく、いわば「逆年功序列」みたいなものです。男の世界だったら、このケースはまずないですよね。

 当然、いまは男女雇用機会均等法がありますから、女性も男性と同じように企業に入れば一緒ですよ。私も日経で働いていたころは、やっぱり1年目よりも5年目の方が仕事はできたから、給料も上がりました。

 こんな真逆の両パターンを経験したからこそ、女の子って面白いなとも思うし、女の子しか経験できないことですよね。

 それに、この「素人神話」が、女の子のベクトルを全方位に向けることにもつながるんです。

 ブルセラショップの話をしましたけど、そこで商品が売れる女の子って、ちょっとカワイくて、ややイモくさいけど、男ウケする子。同性が憧れるような、スラッと細くてカッコイイ系の女の子は、そんなに商品が売れないんです。

 でも、街に出れば注目を集めるのは後者の方。商品は売れなくても、そうやって「私はイケてる」とプライドを保っている女の子がいるかと思えば、逆にブルセラショップでは私の商品が売れていると自負している子もいる。様々なヒエラルキーがあるのが、女の世界なんです。

 そういう意味では男性社会は基本、ベクトルは一つの方向を向いていますよね。例外はありますが、基本は学歴や給料が高い男性を女の子は選びます。でも、男性が選ぶ女性って、学歴が高いとかってあまり関係ないケースが多い。その最たる例が女医さんなんです。

 男性の医者って、それこそ看護師、女子大生と普通にモテたりするけど「医者になってから、モテなくなった」とか「そもそも出会いがない」と嘆いている女医さんって結構いるんです。学校に入って「勉強をしろ」って親から言われ、頑張って頑張って努力して女医になった。高い給料をもらい、社会的にも尊敬もされるけど「出会いがない」と嘆くんです。

「男の人は努力すればするほどモテる。いいなぁ~」って言っている女医さんって結構いますよ。そう考えると、いろんな価値観がある女の子の世界は、非常に興味深いです。

 連載はここまでですが、これまで読んでくださって、ありがとうございました。(終わり)

☆すずき・すずみ=1983年7月13日生まれ、東京都出身。2002年に慶応義塾大学環境情報学部入学。そのころからキャバクラで働きはじめ、04年にAVデビュー。07年、東京大学大学院学際情報学府に入学する。卒業後、09年4月、日本経済新聞社入社。都庁や総務省記者クラブ、整理部などに所属。13年に修士論文を元にした著書「『AV女優』の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか」(青土社)刊行。14年8月、日本経済新聞社退社。同年11月「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)を出版し、17年7月に映画化される。著書には「愛と子宮に花束を」(幻冬舎)、「おじさんメモリアル」(扶桑社)。