【鈴木涼美・連載12】日本に根強い素人神話「初・初」女性の作り方

2018年03月28日 10時00分

鈴木涼美氏が語る日本人の「素人神話」とは

【東大大学院出身の元セクシー女優・鈴木涼美「ワタシの値段」(12)】中国人の熱烈な「日本人AV女優信仰」についてお話ししましたが、これが日本人に限ると全くの逆。「素人神話」が根強くあるんです。

 よく高級デリヘルとか高級ソープとか「高級」と名の付く風俗なんかでは「素人専門」とか「うちの女の子は素人ですのでホームページに顔は載せてません」とかあるんです。まあ、風俗で働いている女の子が「素人」というところに、すでに矛盾はあると思うんですが…。これは日本のオジサマたちの「処女信仰」に近い「素人神話」なんです。

 アメリカにも娼婦はいますよね。でもテクニックがなくて、イモくさくて、冴えない女の子だけど人気がある、なんてことはなくて、やっぱりセクシーだったり、テクニックがあったりあか抜けていたりする女の子の方が人気です。中国の「AV女優信仰」もその一つですよね。「AV女優」こそセックスシンボルであり、高いお金を出すに値するが、「素人」には高いお金は出さない。

 これが日本は逆。普通の子が「あんなこともこんなこともしてくれる」という妄想が「素人」という言葉には込められていて、その言葉が日本のオジサンのオチンチンには刺激になる。

 だから、日本の風俗業界で一番価値の高いといわれているのが「初・初」女性になるんです。
「業界未経験の“初”出勤日の“初”仕事」の女の子のことを言うんですが、日本というのはこの「初・初」女性を作るシステムが異常に発達しているんです。
 そもそも、こういった「初・初」の子って、その辺りを歩いている女子大生とかOLとか、いわゆる「素人」の女の子が、全員「あんなこともこんなこともしてくれる」ワケではないんです。ソープで3年働いていたけど、今度はデリヘルで働くことにした女の子だったりするんです。

 ソープは3年だけど、デリヘルは業界未経験の「“初”出勤」ですからね。これで、「初・初」の女の子が出来上がるわけです。

 場合によってはソープで働いていたことを言わなかったり、あえて経験を引き算するときもあるし、マットプレーやローションプレーができても、あえてしないような子もいる。それをうまく利用して「素人」の女の子を作り上げたりもする。

 そういう「素人神話」を持ち、「素人」をこよなく愛すおじさまたちを巧みに利用したのが、近年はやっている“パパ活”なんです。

☆すずき・すずみ=1983年7月13日生まれ、東京都出身。2002年に慶応義塾大学環境情報学部入学。そのころからキャバクラで働きはじめ、04年にAVデビュー。07年、東京大学大学院学際情報学府に入学する。卒業後、09年4月、日本経済新聞社入社。都庁や総務省記者クラブ、整理部などに所属。13年に修士論文を元にした著書「『AV女優』の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか」(青土社)刊行。14年8月、日本経済新聞社退社。同年11月「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)を出版し、17年7月に映画化される。著書には「愛と子宮に花束を」(幻冬舎)、「おじさんメモリアル」(扶桑社)。