【鈴木涼美・連載8】新聞記者になって知った「女の武器って使えないなあ」

2018年03月24日 10時00分

日経新聞の記者として活躍していた鈴木涼美氏(提供写真)

【東大大学院出身の元セクシー女優・鈴木涼美「ワタシの値段」(8)】前回、日経新聞の記者になったと書きましたが、そのころの話をもう少し。

 大学院を卒業するときに、別の世界も見てみたいなと思ってサラリーマンを選択したんです。ただ、当時もキャラクターを意識してたんでしょうね。セクシー女優を経験しているから、そのイメージとかけ離れたところがいいなと。そこで浮かんだのが、読売新聞と日経新聞だったんですよね。やっぱり新聞記者って職業的にも面白そうだし、キャラクター付けもしやすいかなって。

 日経に入って初めに配属されたのは地方部というところで、都庁担当を2年ほど。その後、総務省担当になりましたね。新人記者のころは石原慎太郎知事で、猪瀬副知事時代。ちょうど東京五輪の招致が失敗した年でしたね。

 記者時代はいろんな人に会えたし面白かったですよ。そうそう「ネタ元と寝てネタを取る女」と噂されたこともありましたね。“ザ・くノ一”みたいで、そういう女性ってカッコイイと思いますけど、実際ないですね。

 官房長官と寝て機密事項を教えてもらうとか、知事に呼ばれて足を触られながら“これ、教えてあげるよ”とか、そんなことあるのかなって思っていたけど、なかったですね。みんな結構まじめで、女の武器って意外と使えないんだなって痛感させられました。

 でも、総務省担当時代はちょっと面白かったかな。東大卒の官僚ってやっぱりお坊ちゃまが多いじゃないですか。チヤホヤされているから感覚がズレているんですよ。取材で総務省の官僚と食事をしている時、手を握られながらこんなことを言われたこともありました。

「エレベーターの中で口づけをしてくだされば、明日の会議のことをもう少しお教えできるんですけど」

 頭がクラクラしました。これはいったい、なんの寸劇なのかと。出世欲もなかったので、体よくお断りしましたけど。

 会社に入って痛感させられたのは、やっぱり男性社会なんですよね。仕事できるのは男性だし、最後の責任取るのも男性だし。それまでオジサンを舐めくさってましたが、見直すところは多いなと。

 それに、いままでキャバクラとかAVとか実力や運で、値段が決まっていた世界にいたじゃないですか。美人だとギャラがちょっと高かったり、ナンバー2だと時給が低かったり。でも、会社は違うんです。

 私よりどんなに仕事ができても、どんなに美人でも、どんなにブスでも同期なら、ほぼ給料は一緒なんですよ。ましてどんなに仕事ができなくても、どんなにオバサンでも年齢が上なら、給料が上なんです。いままでのキャバクラやAVの世界とは違うお金の仕組みを見られたのはある意味、良かったかもしれません。

☆すずき・すずみ=1983年7月13日生まれ、東京都出身。2002年に慶応義塾大学環境情報学部入学。そのころからキャバクラで働きはじめ、04年にAVデビュー。07年、東京大学大学院学際情報学府に入学する。卒業後、09年4月、日本経済新聞社入社。都庁や総務省記者クラブ、整理部などに所属。13年に修士論文を元にした著書「『AV女優』の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか」(青土社)刊行。14年8月、日本経済新聞社退社。同年11月「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)を出版し、17年7月に映画化される。著書には「愛と子宮に花束を」(幻冬舎)、「おじさんメモリアル」(扶桑社)。