【鈴木涼美・連載3】マジックミラー越しに見たオジサンたちの性態

2018年03月19日 10時00分

ブルセラショップに通っていた女子高生時代(提供写真)

【東大大学院出身の元セクシー女優・鈴木涼美「ワタシの値段」(3)】100円ショップで買ってきたパンツが1万円に変身するという話をしましたが、そこのブルセラショップでは他にもいろいろなものを売っていました。

 ブルセラショップの待合室に入った私たちは「P10、B13、S15、D12」とか書かれた札を胸につけるんです。Pはパンツで1万円、Bはブラジャーで1万3000円とかいった具合ですね。Dは唾液。フィルムケースに入れて渡すんです。人気商品だったのはSかな。おしっこですけど、買ったその場でゴクゴク飲んでいるオジサンとかいましたよ。

 お客さんで来店したオジサンたちはマジックミラー越しに私たちが並んでいるところを見て、指名して札に書かれた商品を購入するんですが、そのときに「鑑賞」っていうオプションをつけられるんです。そのオプションをつけると、買うだけじゃなくて、個室に入って私たちを見ながら、オナニーができるんですよ。マジックミラーだからお客さんの側からは見えて、こちらからは何も見えないってことになっているんですが、光のちょっとした具合や、角度が変わると、シルエットが見えたりすることもあるんです。

 自分たちが脱いだルーズソックスを持ったオジサンの心の中に“踏まれたい願望”があるのか、そのルーズソックスを顔に近づけて踏まれている感じを出しながらオナニーしてたりするんです。

 別のオジサンは私たちがフィルムケースに入れたD、つまり唾液をローションの代わりにしてオナニーしてるんです。

 まだ16歳のバージン少女が、マジックミラー越しとはいえ、その光景を見るわけです。そりゃ、オジサンをなめくさった少女になりますよね。圧倒的にオジサンに勝っている気がする、滑稽に思えるっていうのは、そういうワケなんです。

 今現在、作家の仕事をしていると、フェミニストのオバサンたちと討論するなんてこともあるんですけど、オジサンたちが持っている既得権益を打破して女性は生きていかなければいけないっていう話になると、どうしてもかみ合わない。決定的に違うのは私の中でオジサンは既得権益を持つ敵ではなく、滑稽なものであり、むしろカワイイ存在という意識が強いんですよね。その感覚はこのギャル時代に備わったのかなと思います。

 そんな渋谷ギャルを過ごしていたんですが、高校3年生の6月ごろ、もう満喫したなって感じてギャル時代を終了させたんです。そこから予備校の夏期講習に入って、受験勉強に励むことになるんですが、そのきっかけとなった出来事があるんです。米国女優のジュリア・ロバーツが主演した映画「プリティ・ウーマン」なんです。

☆すずき・すずみ=1983年7月13日生まれ、東京都出身。2002年に慶応義塾大学環境情報学部入学。そのころからキャバクラで働きはじめ、04年にAVデビュー。07年、東京大学大学院学際情報学府に入学する。卒業後、09年4月、日本経済新聞社入社。都庁や総務省記者クラブ、整理部などに所属。13年に修士論文を元にした著書「『AV女優』の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか」(青土社)刊行。14年8月、日本経済新聞社退社。同年11月「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)を出版し、17年7月に映画化される。著書には「愛と子宮に花束を」(幻冬舎)、「おじさんメモリアル」(扶桑社)。