【鈴木涼美・連載2】ブルセラショップで「資本主義」を実感

2018年03月18日 10時00分

女子高生時代の鈴木涼美氏(提供写真)

【東大大学院出身の元セクシー女優・鈴木涼美「ワタシの値段」(2)】高校生の2年間くらい通ってましたね、ブルセラショップには。私が大学に入ったあとの4か月くらいで、店はつぶれたって「風の噂」で聞いたし、その辺りでは一気に摘発もあったりで、私たちが最後の“ブルセラ世代”といわれてましたね。

 その店は渋谷駅の南口にあったんですけど、放課後に行って、1万円儲かったらプリクラを撮りに行くとか、そんな生活を送っていて、当時はトータルでも200万から300万円は稼いだかもしれません。

 ブルセラショップといっても基本的には「USED CLOTHES」。古着屋なんです。その店のシステムはお客がマジックミラー越しに並んでいる女子高生を見て「あの子の○○が欲しい」と買っていくんです。現役の女子高生は待合室に20人くらいいるんですけど、そこではセガサターンをピコピコやって遊んでいたり、テレビを見たり、ダンスのパラパラの練習をしていたりして、お客さんを待っているんです。

 当然、その前に売るものの準備があるんですよ。100円ショップでパンツを買ってきては2時間ほどはいて、そのパンツに匂いをつける。そしたらたった100円だったはずのパンツがあっという間に1万円になる。“女子高生”という付加価値が付くと、パンツが100倍になるんです。資本主義ってこういうことなんだと改めて実感しましたね。

 でも、そのパンツにはからくりがあって、実は私たちはパンツを2枚はいているんです。その店は生脱ぎ店というスタイルで、選ばれたら、マジックミラーの前で、パンツを1枚脱いで下のスキマから脱いだパンツを渡すんです。お客さんからしてみたら、女子高生が実際に、脱いでいるところを生で見ているわけですから、ノーパンだと思っている。でも、実のところは、パンツの上にはいている外側のパンツを脱いで渡すわけだから、私たちにとってはブルマーを脱いでいるような感覚なんです。まあ、あんまり抵抗がないんですよ。

 こういうシステムだから、何一つこちら側にリスクはない。“指先一つ触れずにセックスは売れる”と確信しましたね。おいしい商売だと思っていたし、欲しいものがたくさんある私たちにとって、あまり罪悪感もないし、辞める理由すら見当たらなかったかな。

 当然、そのブルセラショップで売っているのはパンツだけじゃなくて、現役女子高生のありとあらゆるものを売っている。それを買い求めるオジサンがいる。そのおかげで、当時の女子高生からすれば、圧倒的にオジサンに勝ってましたよね。滑稽なものとすら感じていた時代でした。

☆すずき・すずみ=1983年7月13日生まれ、東京都出身。2002年に慶応義塾大学環境情報学部入学。そのころからキャバクラで働きはじめ、04年にAVデビュー。07年、東京大学大学院学際情報学府に入学する。卒業後、09年4月、日本経済新聞社入社。都庁や総務省記者クラブ、整理部などに所属。13年に修士論文を元にした著書「『AV女優』の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか」(青土社)刊行。14年8月、日本経済新聞社退社。同年11月「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)を出版し、17年7月に映画化される。著書には「愛と子宮に花束を」(幻冬舎)、「おじさんメモリアル」(扶桑社)。