60勝達成・藤井六段に“カミ・シモ”問題浮上

2018年03月16日 16時30分

三枚堂六段(右)を破った藤井六段

 将棋の名人戦順位戦C級2組最終戦、藤井聡太六段(15)と三枚堂達也六段(24)の対局が15日に東京・渋谷の将棋会館で行われ、藤井六段が85手で三枚堂六段を下し10勝0敗で今期の順位戦を終えた。藤井六段は1月11日から15連勝。全勝のC級2組1期抜けは史上6人目となった。2017年度の勝利数が60勝の大台に到達し、すでに最多対局、最多勝利、最高勝率、最多連勝で1位も確定している。そんな藤井六段に、15歳にして圧倒的な強さゆえに思わぬ難題が持ち上がった。

 藤井六段がリベンジに成功した。三枚堂六段は昨年7月、上州YAMADAチャレンジ杯で当時四段の藤井六段を破っている若手の強豪だ。

 今回は三枚堂六段得意の「横歩取り戦法」に応じ、正確な差し回しを見せた。前回の対局では200手を超える長手数だったが、今回は序盤からリードを広げ、予想外に早い終局。対局後、藤井六段は「今日は模様の良さを生かせたと思う。(全勝昇級に)いい形でフィニッシュできてうれしく思っています」と表情をほころばせた。

 藤井六段は2月1日に順位戦9連勝でC級1組昇級を決め、中学生初の五段に昇段もしていた。同17日には全棋士参加の公式戦(朝日杯)で初優勝し、中学生初の六段に昇段。今月13日には勝率など記録全4部門の1位が確定、最年少「4冠王」となった。

 第一人者の羽生善治竜王(47)は、順位戦で最初に参加するC級2組の突破に2期かかった。順位戦は最上位のA級からC級2組までの5クラスに分かれ、A級の優勝者が名人挑戦者となり、各組上位者が上のクラスに昇級する。

 次戦の対局の日程は決まっていないが、4月から高校生になる藤井六段を悩ませるかもしれない問題がある。それが「上座・下座」の選択だ。

 将棋の対局では、格上の棋士が床の間を背にした上座、格下の棋士が下座に座るのが通例となっている。段位が上の棋士が上座で、同じ段位なら、タイトルホルダーや先輩の棋士が上座…といったマナーがある。

 ところが、藤井六段はあまりにも早く昇段してしまったため、五段以下に先輩棋士が30人ほどいる、という事態になっているのだ。そのため、藤井六段が段位が下の先輩棋士と対局する場合、どんな行動を取るのかに注目が集まっている。

 実はこの「上座・下座」をめぐる問題が、大きな話題になったことがある。それは1994年のA級順位戦の羽生4冠(当時)の通称「3連続上座奪取事件」だ。

 名人挑戦をかけたA級順位戦の残り2局、中原誠前名人と谷川浩司王将(当時)との対局で、羽生四冠は上座に座り、周囲を驚かせたのだ。マナーから言えば、当時23歳でA級9位の羽生4冠は、順位が上で先輩の中原前名人、谷川王将に上座を譲るべきだった。羽生4冠はその後、名人挑戦をかけた谷川王将とのプレーオフでも上座に座り、さすがの谷川王将も表情をこわばらせたという。もっとも羽生4冠には全く悪意はなく、無意識で上座に座っていたらしい。

 現在、藤井六段と対局が決まっている棋士にはこれに該当する段位が下の先輩棋士はいないが、いずれこうした事態に直面するのは間違いない。

 あるベテラン棋士は「私は譲ると見ています」と話していたが、果たして藤井六段は「どうぞ、どうぞ」と譲るのか、堂々と上座に座るのか? 藤井六段にとって意外に難解な局面となるかもしれない。