任天堂「コロプラ提訴」背景に家庭用ゲーム機Switch巡る確執も

2018年02月23日 16時30分

任天堂の君島達己社長(ロイター)

 ゲーム業界が大型訴訟に注目している。業界の盟主「任天堂」が昨年末、ゲームの特許を侵害されたとしてスマホゲーム会社「コロプラ」を相手取り、東京地裁に配信停止と44億円の損害賠償を求め、提訴したからだ。双方の言い分は対立しているが、業界内では「特許侵害は理由の後付け。それ以前のイザコザでコロプラは任天堂の怒りを買ってしまった」という見方が根強い。

 提訴は2017年12月22日付。任天堂はコロプラのスマホRPG(ロールプレーイングゲーム)「白猫プロジェクト」に5件の特許侵害があるとして、配信停止と44億円を請求している。2月16日には第1回口頭弁論が開かれ、コロプラ側は侵害の事実を否定し、争う姿勢を示している。

 特許や著作権などをめぐる数々の裁判で勝ち続け「最強」の名をほしいままにしてきた任天堂にニラまれたとあって、ゲーム業界、ゲームファンら大多数の意見は「コロプラの勝ち目は薄い」だ。

 業界関係者は「裁判では、スマホのパネル上のコントローラーの技術などが特許とされる。スマホゲーの世界は“パクリ上等”で、ヒット作が1つ出ればすぐに解析され、ほぼ丸パクリの2匹目のドジョウを作られる。トレンドを追うことも開発努力とされているので理解できないこともないが『白猫』でコロプラは400億円の収益を得たとされる。小金を稼ぐくらいならよくても、任天堂は『おまえらやりすぎ』と思ったのだろう」と解説する。

 一方で「任天堂からすれば40億円の賠償金など決して大きくない。訴訟は表面上のケンカで、本題は別のところにある」「任天堂に仁義を切るべき場面で、コロプラがヘタをうった」という噂も根強く業界内をかけめぐっている。

 任天堂も数年前からスマホゲーに進出してきた。規制が進みつつあるとはいえ、スマホゲーの課金は社会問題としてよく取り上げられる。

「任天堂は家庭用ゲーム機を作ってきた矜持があるのでしょう。スマホゲーでほぼ課金させずに、家庭用ゲームに送客する戦略を取っています。スマホの『どうぶつの森 ポケットキャンプ』で裾野を広げて、いずれは家庭用ゲーム機『Switch』で出すどうぶつの森新タイトルで堂々と稼ぐつもりでしょう」(別の業界関係者)

 Switchに関連して、前出の「裁判の本題」については、ある「シナリオ」もささやかれている。

「任天堂とコロプラが『白猫』をはじめとした複数タイトルをSwitchで出す方向で協議していた」(あるゲームプロデューサー)というものだ。

「その場合、任天堂はSwitch版だけのオリジナル要素を入れてくれと要求するだろう。ゲームをおもしろくするためには当然のこと。しかし、コロプラとしては超ドル箱コンテンツのスマホ版で遊ぶユーザーを手放すわけにもいかない。スマホ版の収益とてんびんにかけて、Switch向けに開発していたタイトルを撤退させた。これが、自社の矜持であるハードをないがしろにされた任天堂の逆鱗に触れたというわけです」(前同)

 もちろん、これらは業界で“よくある話”をベースにした推測の域を出ないが、現実は今後の裁判や、両社の動きで全真相が明らかになる。

 これまで特許のパクリを黙認してきた任天堂の“大激怒”はスマホゲーム関連企業にとって全く人ごとではない。

「パクリに気を使っていたら、良いものなんてできやしない」という関係者の声もあるが、任天堂の提訴でゲーム創作のあり方に一石を投じたことは間違いない。