六段昇段・藤井聡太「超高速レベルアップ」の転機

2018年02月20日 11時00分

わずか半月で昇段を果たした藤井聡太新六段

 藤井聡太六段(15)の「高速のレベルアップ」に、棋士たちが衝撃を受けている。17日行われた将棋の朝日杯オープン戦で羽生善治竜王(47)、広瀬章人八段(31)を破り、史上最年少で全棋士参加の棋戦で優勝を果たした。わずか半月で昇段を果たした藤井六段の強さに周囲はぼうぜんとしている。中でも若手棋士の衝撃は大きい。今後ライバルとなるべき若手棋士が出てくるのか、将棋界の大きな課題となりそうだ。

 国民栄誉賞を受賞したばかりの羽生竜王との公式戦初対局を制し、決勝ではA級棋士の広瀬八段を破っての優勝で、六段昇段も最年少記録。この偉業に、“光速の寄せ″の異名で知られる谷川浩司九段(55)は、18歳でNHK杯優勝を果たした羽生竜王に比べて「比較にならないほど価値が高い」と絶賛した一方で「20代、30代の棋士たちに『悔しくないのか』と言いたい気持ちがある」と厳しい言葉を投げかけたという。

 藤井六段は29連勝後、自分の将棋を見失い、調子を落とした時期もあった。しかし、ここ2~3か月で「超高速のレベルアップ」。急成長を遂げ、2018年に入ってからは11勝1敗(11連勝中)。しかも、29連勝時よりもA級棋士など格上を相手にしての連勝だけにその価値は高い。

 ターニングポイントとなったと言えるのが、昨年12月23日に行われた叡王戦本戦の深浦康市九段(46)との対局。終始、藤井六段が優位を保ち、勝勢になっていた。しかし、終盤、深浦九段の驚異的な粘りと秒読みに追われる焦りから、藤井六段が大悪手を指し、プロ入り後初の大逆転負けを喫した。あまりの悔しさに、藤井六段は脇息に覆いかぶさるようにしてうなだれた。

 このショッキングな敗戦が藤井六段を大きく成長させたに違いない。以降の対局では時間の使い方、形勢判断、終盤での慎重な差し回しと、より精度を上げ、現在はほぼ無敵状態になっている。

 朝日杯の準決勝、決勝とも時には慎重過ぎるほど慎重に、老かいに決めるべき時はあっと驚く勝負手を繰り出し、大偉業を成し遂げた。

 そんな藤井六段の偉業に棋士の中でも特に若手棋士は大きな衝撃を受けている。会場でその瞬間に立ち会った高見泰地六段(24)もその一人だ。今期からタイトル戦となった叡王戦で決勝7番勝負に進出した若手の俊英だ。

「ボクは若手といっても、藤井さんは9歳年下。それであんな勝ち方をされると、正直悔しい気持ちがあります。ボクなんかは(朝日杯決勝トーナメントで)羽生さんが前にいるだけで、緊張して負けてしまった。それが、競る前に勝ってしまう…あんな勝ち方ができるのは本当にスゴイ。しかもまだ底が見えない。ものすごい危機感があります」とこわばった表情で語った。

 実力派の人気女流棋士・室谷由紀二段(24)もこう感嘆の声を上げる。

「もう驚きの連続です。終わってみれば圧勝。一体、どこまで行くのかって感じですね。どんな存在か? いや、藤井先生は神様です」

 15歳にして「神」と呼ばれた藤井六段。それでも本人は「まだ序盤は難しいというより分からない」と感じているという。「自分はもっと強くなれる。まだまだ足りないところがたくさんある」と淡々と語るその表情はなるほど、神々しい。

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