ブルーリボン賞3冠のヤン監督は北野フリーク

2013年02月11日 11時00分

 第55回ブルーリボン賞(2月14日授賞式)で主演女優賞、助演男優賞、作品賞と3冠を獲得した話題の映画「かぞくのくに」だが、監督のヤン・ヨンヒ氏(48)は筋金入りの“北野武フリーク”だった。また現在、実兄たちが暮らす北朝鮮にニラまれ、同国政府から渡航禁止制裁を受けている衝撃事実も監督自ら明かした。

 在日2世のヤン監督が、帰国事業に参加し北朝鮮で暮らす実兄たちとの実話を基にし、家族愛をテーマに製作した初のフィクション作品が「かぞくのくに」だ。

「生まれ育った国でやっと居場所を見つけたような感覚。とてもうれしい」と3冠を喜ぶヤン監督に、好きな日本人映画監督を聞くと「そうですね~」と恥ずかしそうに「実は北野監督が好きなんです」と告白した。

「何というか、北野作品には簡単に語れないところがある。そういうところが大好き」。特にお気に入りの作品は「ソナチネ」(1993年)と「Dolls」(2002年)だという。

「あんまり北野監督のことを言うと“コレ”してるみたいで嫌なんですけどね」と、手のひらで“ゴマスリ”のポーズ。だが、北野ファンが高じ「ニューヨークの大学に留学していた時、『北野作品について』というリポートを書いた」というから筋金入りだ。

 女優でもイケそうな美人、そしておちゃめなアラフィフだが、つらい経験もしている。06年、朝鮮総連幹部だった父と自分の関係を描いたドキュメンタリー映画「ディア・ピョンヤン」を製作したことで、北朝鮮から入国禁止の扱いを受けたのだ。数年前、「北朝鮮の方から『謝りに来ますか?』という申し出があった」という。「ちょうどこの映画(かぞくのくに)を製作したところだったので、『次の映画を見てから(入国を許可するか)決めてください』とお話しした」が、その後連絡はなし。実兄たちはいまだ北朝鮮で暮らしており、ヤン監督が北朝鮮を題材にした映画を撮り続けることで、兄たちの立場が危うくなることも想定される。

「はっきり言えば、私のわがままなんでしょうね。やりたいことをやる。それは私のエゴです。兄たちも『やめろ』とは言わない。『やりたいことをやれ』と。それに、収容所のほうも満杯なんじゃないですか?」とギリギリのジョークを飛ばすヤン監督。その目からは、映画人として自分の信念を貫く強い意志を感じさせる。

「今後も北朝鮮、在日をテーマにした作品を撮り続けると思います」と宣言し、写真撮影では「嫁入り前なのに」と苦笑しながらもおちゃめなポーズ。「この映画で分かったことは、フィクションを作り込むほど、その底に潜むリアルが出てくる。私にとっては大きな収穫でした。もっと多くの人にこの作品を見てもらって、何かを感じていただけたら」と思いを語った。