ハリウッドで相次ぐ性暴力告発の最中、セクハラ撲滅を連帯で示すため、今月7日のゴールデン・グローブ賞では、ほとんどの女性陣が黒いドレス姿で出席した。それに続き、3月4日に行われる第90回米アカデミー賞もまた、この問題が暗い影を落としている。

 今週発表されたオスカー候補で最も注目されたのはギレルモ・デル・トロ監督による“捕らわれのエイリアンと女性の愛”を描いたファンタジーロマンス映画「シェイプ・オブ・ウォーター」(日本公開3月1日)。作品賞を含む最多の13部門でノミネートされた。

 日本人では「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」で特殊メークの辻一弘(48)がメークアップ&ヘアスタイリング賞にノミネート。短編アニメ賞候補には桑畑かほる監督(36)の「Negative Space」(原題)が選ばれた。

 ただ、“アカデミー賞の前哨戦”とされるゴールデン・グローブ賞のミュージカル・コメディー部門で、主演男優賞を受賞した「The Disaster Artist」(原題)のジェームズ・フランコ(39)は落選。その名前はノミネートリストになかった。ここには同賞受賞後、複数の女性からセクハラ告発されたことが影響したとみられている。

 また、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」で昨年、アカデミー賞主演男優賞を獲得したケイシー・アフレック(42)が、予定されていた授賞式でのプレゼンター役を辞退。同賞授賞式では前年の主演男優賞受賞者が、主演女優賞部門のプレゼンターを務めることが慣習になっていることから、辞退は異例だ。これもケイシーがセクハラ行為で訴えられた過去が最近、改めて報じられたためだ。

 本人に近い関係者は「ケイシーは主演女優賞自体より自分がプレゼンターを務めることに注目が集まることを避けたいという気持ちからの判断だ」としている。ただ、辞退について主催者である米映画芸術科学アカデミー側は「決断に感謝する。授賞式に集中できる」と冷めたコメントを発表した。授賞式では、再び黒いドレスがレッドカーペットを覆うのかは不明だが、セクハラ撲滅を訴える受賞スピーチに焦点が集まることは確実だ。