涙誘うミス・ベトナムの“おしん”なサクセスストーリー

2018年01月26日 11時00分

【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】ベトナム南部ニャチャンで6日、ミス・ユニバース・ベトナムの選考会があり、エントリーした42人の中から少数民族エデ族のホネン・ニエさん(25)が優勝、今年のベトナム代表に選ばれた。

 T172・B84・W60・H93のスレンダーボディーにエキゾチックな顔立ちで、力強い目に褐色の肌、ショートカットが特徴的。南部ホーチミン市の駐在員によれば「ベトナム代表が決まってから、報道はニエさんの話題一色。その生い立ちや苦労話が地元民を泣かせている」という。

 ベトナムで人口の10%ほどを占める少数民族の多くは、山岳地帯に住み生活は厳しい。東北のタイグエン地方で農民として生計を立てていたニエさんの実家も同様で、彼女は幼いころから牛の世話やまき割りなどを手伝っていたという。学校に通えない子供もいるなか、勉強が好きな彼女は、赤土の道を砂嵐が吹き荒れる乾季も、泥沼となる雨季も休まず学校へ通った。

 ただ、ニエさんの村では「女が学問なんて」という考えがいまだ根強く、義務教育(小中学校の9年)を終え、進学する女性はわずか。すぐ結婚し、農村の働き手となることが求められていた。

 ニエさんも両親に早い結婚を望まれていたが、どうしても勉強がしたいと進学を決意。最大都市ホーチミン市へ上京し、経済学の専門学校に通い企業金融を専攻した。お手伝いなどのバイトで学費を稼ぎながらの苦学生活が報われ、卒業後は銀行に就職を果たした。

 農業よりはるかに高い給料は実家の借金返済に充て、さらに収入が得られれば、村の生活向上に役立てるとモデルに転身。そして今回、世界的ミスコンのベトナム代表にまで上り詰めた。

「ベトナム人は日本人に似た気質があって、こうした苦労からのサクセスストーリーに弱い。“ベトナム版おしん”のような物語に人々は飛びつき、ニエさんは今やアイドルのような扱い」と前出駐在員は明かす。

 地元紙によるとニエさんは22日、故郷に凱旋し、空港は民族衣装をまとったエデ族の出迎えで埋め尽くされた。その群集に両親の姿を見つけるや、ニエさんは号泣して抱きついたという。

 ミス・ベトナムの座を射止めた際のインタビューで「少数民族の貧しい女性たちの励みになれば。村の古い考えにとらわれず、広く活躍してほしい」と発言したことから、今やニエさんは若い地元女性たちの“希望の星”になっているという。

 80か国以上からえりすぐりの美女が集まるミス・ユニバース世界大会は今年、フィリピンで開催予定だが、ベトナム人が優勝したことはない。

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、4年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「海外暮らし最強ナビ・アジア編」(辰巳出版)。