「今日もひとり、明日もひとり、過去から逃げてくる」のフレーズで知られる「終着駅」や「恋3部作」と呼ばれる3曲などのヒット曲を送り出した歌手奥村チヨ(70)が今年いっぱいで歌手を引退することが、6日にユニバーサルミュージックから発表された。1965年のデビューから今年で53年。引き際が肝心との美学に基づく決断だという。

 24日に発売される卒業アルバムに新曲「サイレントムーン」を入れた奥村。報道各社への書面コメントで「今年いっぱいで歌手活動を卒業する事を決心致しました。デビュー以来多くのヒット曲にも恵まれ、私が40才代の時には“恋の奴隷”の歌と共に私のファッションもとても若い方々に気にいって頂き、最高にハッピーでした」とこれまでを振り返った。

 歌手人生に幕を引く理由は「私の人生はいつも引き際が大事だと思い、本当は2014年に母が亡くなった時にもう完全にやめようと思っていたのですが、ついつい私の好きな作品とめぐり会ってここ迄来てしまいました」と説明。今回のアルバムに収録された「サイレントムーン」は、最後にめぐり会った「感動できる歌」だといい、この曲で歌手を卒業したいとした。

 奥村は兵庫県の私立女子高校在学中、知人が応募したCMソングのオーディションに合格したことがきっかけで歌手の道へ。65年3月に「あなたがいなくても」でデビュー。このカップリング曲がフランスの人気歌手シルヴィ・バルタンのカバー曲だったため「和製シルヴィ・バルタン」の異名もつけられた。

 69~70年発表の「恋の奴隷」「恋狂い」「恋泥棒」の「恋3部作」の爆発的ヒットで、人気歌手としての地位を確立。71年末の「終着駅」は、それまでの艶っぽい楽曲から脱却するようなバラードで、大ヒットした。この時期、NHK紅白歌合戦に3回出場している。

 74年に作曲家の浜圭介氏(71)と結婚し第一線を退く。80年に活動を再開し、16年11月に12年ぶりとなる新曲を発表。ライブ活動も行っていた。