将棋史上初の「永世七冠」達成の快挙によって国民栄誉賞が授与されることが決まった棋士・羽生善治氏(47)が5日、都内の将棋会館で会見した。

 19歳で初タイトルを獲得してから、環境の変化や若手の台頭をものともせず、常にトップを走り続けてきた。羽生氏はその秘訣について「マラソンとかを走ってるときに、トップになる必要はないとは思うが、トップ集団にいるのは大事だと考えている。その集団にいる中で切磋琢磨して、そのときそのときの流行のものや最先端のものを取り入れながら前に進んでいくことを心がけてやってきた」と語った。

 将棋界は「変化が早い世界」だと話す。「過去にどんな実績があろうとも、今ある潮流に乗り遅れてしまうと取り残されてしまうという思いが常にある」

 昨年の竜王戦後に多くのファンから祝福された。「たくさんの方からの応援、支えがあったから達成できたとしみじみ実感したときでもある」。当然、家族のサポートも重要だった。「棋士というのは普段は地味、地道な活動が多いが、実際はかなり長丁場で体力も使うので、食事の面で気をつけてもらった。あるいはタイトル戦で和服を着て対局するときもキッチリ準備してもらって、いつも万全の態勢で対局に臨めるように、きめ細かく神経を使ってもらってるので本当にありがたい」と周囲への感謝を述べた。

 羽生氏が国民栄誉賞に抱くイメージは初代受賞者であるプロ野球の王貞治氏(77)だという。「最初にイメージするのは野球の王監督。ちょうど私が小学生くらいのころに王選手のホームランの記録が非常に騒がれていた時期だった。ただ、まさか自分自身が賞をいただけるようになるとは夢にも思ってなかった」

 次の具体的な目標を公式戦「通算1400勝」と定めた羽生氏は、長期的な将来像は想像がつかないとしたが「一年一年、息長く活躍できる棋士になりたい」と述べた。30分間の会見の最後には、数秒間、長めの礼をして会場を後にした。