まさかの電撃決定だ! NHKは19日、「第68回紅白歌合戦」に、来年9月で引退する歌手の安室奈美恵(40)が出場すると発表した。2003年以来、実に14年ぶりで、紅組、白組ともに属さない「特別出演歌手」での出場となる。曲目や歌う場所などを含めて詳細は決まっていないが、何はともあれ、粘り強く交渉した同局にとっては快挙と言っていい。それにしても、いったい何が希代の歌姫の心を動かしたのか。その舞台裏を追跡した――。

 安室の出演はNHKの悲願だった。90年代から第一線で活躍し、ミリオンセラーを連発。そのファッションをマネする“アムラー現象”までも生み出したカリスマは、40歳の現在まで抜群のスタイルとステージパフォーマンスを維持してきた。

 そんな歌姫が電撃引退を発表したのは今年9月のことだ。当然、同局は動いたが、先月16日に紅白出場歌手が発表された際、安室の名前は含まれていなかった。

 制作統括の矢島良氏は「ご出演はお願いさせていただいている。基本的にはご出演していただけるか、していただけないかの結論が出るまで、粘り強く交渉させていただく。(交渉の)タイムリミットは決めてない」と説明していた。

 音楽関係者が言う。

「この段階では、安室サイドは出演するそぶりさえ見せていませんでした。『100%(出場は)ない』とまで言い切っていたのです。理由は来年に始まる引退ツアーが大きい。あくまでファンを第一に考える安室としては、ライブを通してフィナーレを迎えたい。それなのに、紅白に出てしまったら、それが最後のような印象を与えかねませんからね」

 引退ツアー「namie amuro Final Tour2018~Finally~」はナゴヤドームを皮切りに、国内5大ドームとアジア3都市を回る。先日は追加公演も決定し、ソロアーティストとしては史上最多となる計80万人を動員する見込みだ。これを自身の集大成として考える安室にとって、ツアーの前段階の時期に当たる紅白がしっくりこなかったのもうなずける。だが、NHKも簡単には引き下がれない。

「安室がNHKのリオデジャネイロ五輪のテーマソングを担当したので、実は昨年も同局はオファーしました。もちろん、断られましたが、また同じてつを踏むわけにはいかない。そこで“安室番”のスタッフをつけて情報収集に当たったのです。さらに先月23日に放送された安室の特番『告白』も含めて交渉に当たりました」(同関係者)

 それでも安室サイドは「うん」とは言わない。交渉はこう着し「やはり無理か――」と局内に悲観的なムードが漂った時だった。電撃的に出演OKとなった。事情を知る関係者が明かす。

「大きい理由は、その引退ツアーでした。75万人しか入らないのに、応募が320万通もあったんです。関係者ですら入手が難しいほどチケットがプラチナ化しています。追加公演を発表したものの、最後の姿を見られないファンが続出している。さらに先日決まった『告白』の再放送(来年1月7日深夜)もそう。再放送を希望する要望が視聴者から2万7000通も届いた。だったら、国民的番組の紅白で自分のパフォーマンスを披露するのは“あり”だと判断したというわけですね」

 実際、追加公演の応募が開始されたのは、紅白出演の発表と同じ19日。そのあたりも計算が働いているようだ。

「長く続けるために極力テレビ出演を抑えるという安室の考えは、9月の引退が明確になった今、考慮する必要はありません。また、引退後はプロデュース業に携わるとみられるのでNHKに恩を売ることもできる。そんな背景もあるでしょう」(同関係者)

 テレビ生放送の出演は、2010年7月30日の「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)以来。話題性抜群のため、高い視聴率も期待できるだろう。NHKにとっては大きな殊勲となった。