AKB48を卒業して約4年がたった篠田麻里子(31)が、ここにきて女優としての評価を高めている。公開中の映画「ビジランテ」では悪女役を好演、初のラブシーンにも挑戦している。「怖かった」と語る女優業への意識の改革、アイドル時代には見せなかった“弱さ”と改めて向き合う篠田が、本紙にその心境を明かした――。

 ――鈴木浩介演じる夫・二郎の出世のためなら手段を選ばない妻・美希役。政治の世界で美貌を駆使し、権力と財産を得ようとする「悪女」。最初に撮影したのは自身初のラブシーンだった

 篠田:1月4日、仕事始めに抱き合った(苦笑)。以前、浩介さんとお仕事でお見合いシーンを撮影していたので、個人的には「続編かな」と。朝、現場に入って「明けましておめでとうございます」と言う前に「俺、前バリをしなきゃいけないんだよね」って言われて(笑い)。

 ――入江悠監督は「あえてクランクインの日に撮った。AKBであれだけ人前に立ってきたから、やると決めたら強い。何を言っても大丈夫、という感じがあった」と言っていた

 篠田:大丈夫じゃなかったですけどね(笑い)。まず現場に慣れていない状態で、自分の恥ずかしいものを見られる…。でもそれも監督のやり方で、あまり多くを語らず“とりあえずやって!”と委ねられる感じがあって。何も言わずにやるしかないんだなって、不安しかなかった。

 ――AKB時代、自己プロデュースを強く意識しているように見えた。「強い女性」のイメージもあった

 篠田:当時は自己プロデュースが強すぎて、オーバーにあれしよう、これしようというのがわりと増えてしまった。お芝居はある意味、削っていく作業で何もしないことが難しく感じました。自分の弱さとか出していかないといけないから。いろんなものを身にまとった方が私としては闘いやすいんですけど、いろんなものを脱がなきゃいけない。

 ――怖かった

 篠田:うん、怖い…。やっぱり自信ないし、自分に満足できない。そういう部分がすごく増えるから、いろんなものをまといたい。それで自己プロデュースしたり形を作って、人にそれを見てもらいたいっていう私が多かった。お芝居は、本来の自分の弱さみたいなものを出さなきゃいけないですから。

 ――女優の決意も

 篠田:覚悟はできたな、と思いますね。例えば、ちょっと薄着になったくらいで見てもらいたい、評価してもらいたいとかは思わなくて。ただ、自分をさらけ出していくという覚悟の作品になったかなとは思います。

 ――演じることへの意識が強くなった

 篠田:以前はお芝居について苦手な意識がすごく強くて。今まで作ってきたAKB48の自分像を壊しちゃいけないような気がして、自分をさらけ出すことがすごく怖くもあった。この2~3年は、すごく葛藤があった。AKBはダンスや歌のレッスンを経てステージに立つことが多いけど、女優業はレッスンとかそういうものがなくて出ることが多くてすごく不安で…。でも、自分の中で決めて稽古とか勉強することを増やしていくと「あ、自分が思ってた不安材料はこうだったんだな」と分かってきた。それが自信につながってきたのが大きいですね。

 ――克服できた

 篠田:10年くらい前、初めて出たドラマでセリフがひと言しかなかったのに全然言えなくて。その時は理解せず、ただ言うだけのためにそこに立っていた。“そんなひと言も言えないのか”という雰囲気を感じて、トラウマになってた。今思えば、たいしたことないとは思いますけど、それこそ台本の読み方から学ぶようになって、自分の意識が変わってきましたね。今は苦手という意識を捨ててやってみようって思っています。

☆しのだ・まりこ=1986年3月11日生まれ、福岡県出身。AKB48の第1期生オーディションに落選するも、劇場併設のカフェでアルバイト中にファンの支持を得て06年に加入。中心メンバーとして活動しながらモデルや女優としても活躍。13年のグループ卒業後は本格的に女優として活動している。来年2月からの初主演舞台「アンフェアな月」(東京・天王洲銀河劇場)を控えている。