2人の棋士をダブル表彰へ。前人未到の永世7冠を5日に達成した将棋の羽生善治・現2冠(47)と囲碁で今年、再び全7冠独占に復帰した井山裕太7冠(28)に対し、政府が国民栄誉賞を授与する方向で検討に入った。政府関係者が明らかにした。羽生2冠もかつて7大タイトル独占を成し遂げている。授与が決まれば、将棋と囲碁の両7冠達成者が最大級の栄誉に浴することになる。

 政府は授与を検討する方針を13日にも公表。両者の偉業が、国民に感動や勇気を与えたと評価した。有識者の意見を聞いた上で年内にも正式決定するとみられる。

 菅義偉官房長官は6日の記者会見で、羽生2冠が竜王戦を制して永世7冠を決めたことを称賛したが、国民栄誉賞については「安倍首相が決めることで、現時点では決まっていない」と述べていた。それから1週間で、授与への流れが首相側で強まったとみられる。

 内閣府によると、国民栄誉賞は「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉を讃えることを目的とする」表彰制度。内閣総理大臣が、表彰の趣旨にふさわしいと認める者に授与される。

 直近では昨年10月、同年のリオデジャネイロ五輪のレスリング女子58キロ級で金メダルを獲得し、五輪史上初めて女子個人種目4連覇を成し遂げた伊調馨(33)が表彰されている。羽生2冠と井山7冠に授与されれば、団体受賞のサッカー女子日本代表を除き、個人としては24人目、25人目。同時授与は、2013年の長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督(81)と巨人、米メジャーリーグで活躍し12年に引退した松井秀喜氏(43)以来となる。

 中学生棋士としてデビューから30年以上にわたって将棋界のトップで活躍してきた羽生2冠については、永世7冠達成時に「国民栄誉賞ものの快挙」と本紙を含めてメディアで報じられた。囲碁、将棋の世界で受賞者はいないが、スポーツ界では記録達成者や「史上初」の快挙を遂げたアスリートが受けており、通算99期のタイトル獲得、1996年に当時7つだったタイトルを史上初めて同時制覇した羽生2冠は資格十分と言える。

 井山7冠も中学生でプロになり、05年に阿含・桐山杯全日本早碁オープン戦を16歳で制し、一般棋戦優勝の最年少記録を樹立した。00年に最年少の20歳4か月で名人に。昨年4月に囲碁界初の7大タイトル独占を果たすも、11月に6冠に後退。今年10月、昨年失った名人位を取り戻して7冠に復帰。2度の7冠全制覇は羽生2冠もできなかったことで、囲碁・将棋界を通じて初めての偉業となった。

 7大タイトル獲得は30期を超え、かねて希望していた国際戦への注力も進めている。11月にはLG杯朝鮮日報棋王戦の準決勝で、世界最強とされる柯潔九段(20)を破っており、来年行われる決勝戦の勝利も期待されている。

 そんな井山7冠は、東京証券取引所で29日に行われる大納会のゲストに選ばれている。年末恒例の大納会にはその年を象徴する著名人がゲストに招かれており、くしくも昨年は国民栄誉賞の伊調だった。

 羽生2冠と同様に井山7冠の業績も国民栄誉賞にふさわしいと言えるもの。2人に年末の“ビッグプレゼント”がありそうだ。