大みそかの「第68回NHK紅白歌合戦」の出場歌手が、11月16日に発表された。目新しいのは、人気アイドルグループ「Hey!Say!JUMP」がデビュー10周年で初出場を果たしたことくらい。業界内では“今年の紅白は目玉ナシ”と言われてしまうほど、新鮮味のないメンバー構成となっている。

 そうした中、同日に行われた出場歌手発表会見ではチーフプロデューサーが、来年引退する安室奈美恵、さらに連続テレビ小説「ひよっこ」の主題歌「若い広場」を歌った桑田佳祐を出演させるべく「粘り強く交渉します」と明言。番組サイドが「出てもらえるように交渉を続ける」などと言ってしまうことに、どうしても違和感を覚えてしまう。

 NHKサイドが特定の歌手に“紅白出演を熱望する”と公言したのは、昨年のSMAPが有名だろう。8月14日に「年内いっぱいでの解散」を発表したSMAPに対し、籾井勝人会長が「ぜひ出ていただきたい」と定例会見で発言するなど異例の展開となった。

 だが11月末に出場歌手が発表された際、SMAPの名前はなかった。さらに発表会見では、今年の安室、桑田と同様、チーフプロデューサーが「現場としても、できれば出演していただきたいので、最後の最後までお願いしたい」と交渉を継続すると語ったが、SMAPは紅白に出演することなく解散してしまったのは周知の通りだ。

 音楽関係者は「昨年のSMAP、今年の安室、桑田と、特定の歌手を指して『ぜひ出ていただきたい』とか『最後まで交渉する』と言ってしまうと『紅白も普通の音楽番組と変わらないんだな』と思われてしまう。以前は『紅白に出ることが歌手にとって最大の名誉』と思われていたのに、番組サイドが勝手にその価値を下げてしまっている」と指摘する。

 昔は「紅白に出ると出ないでは、営業のギャラが1~2桁違ってくる」などと言われたもの。「ギャラの話は大げさかもしれないが、演歌界はまだ『紅白に出ることが最大の名誉』という雰囲気が残っている。なかなか出られない人からしたら『出てもらえるように交渉している』なんて話を聞くと『ふざけるな!』という思いになるでしょうね」(前出の音楽関係者)

 昔のように「紅白は高視聴率が当たり前」という時代ではなくなり、「数字を取るための切り札」となるアーティストを出演させなければならない事情があるのは理解できる。しかし、わざわざ「出ていただけるように交渉しています」などと言う必要はないだろう。

“高飛車”と言われたとしても「公表はしないけど、紅白の出場歌手の基準はきちんと我々が決めている」くらいの態度でいいのではないか? そうでもしないと「紅白出場」の価値は下がる一方となりかねない。