芸能人を広告塔として利用し、集めた高齢者らに輸入ワインの販売事業などへの投資話を持ちかけ、1046人から総額60億円をだまし取っていた事件の背景には、古典的な人間付き合いの関係性があった。

 本紙既報通り、警視庁が15日に組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)の疑いで逮捕したのは、健康食品販売会社「ロイヤルフーズ」(東京都品川区)社長、原田一弥容疑者(63)ら6人。手口は、集めたお金で最初は配当を出す「ポンジスキーム」。実際に最初に配当をもらえた人たちがある程度はいたようだが、集めた資金の一部を配当名目で返金しているだけという構図だ。

 古典的詐欺だが、ターゲットは高齢者ばかり。詐欺研究家の野島茂朗氏は「実際に高額配当で儲かった人がいるから、高齢者は友人知人から話があると投資してしまいます。ボケ予防のために外出して友人、趣味仲間との交流をしている場からネットワークビジネス、投資ビジネスの案件は入ってきます。友人を大切にする、紹介者の顔を立てる、義理堅い方が多い世代ですから、詐欺ビジネスのカモになりやすいのです」と言う。

 また、多くの芸能人が知らず知らずに関わってしまい広告塔となった。

 あるイベントプロデューサーは「地方での予算が少ないイベントでも、有名人を呼ばないと地元の人が納得しない時、裏メニュールートにお世話になります。タレントに金を貸し付けた人が、債権回収のためにブローカーとして関与しているケースがほとんどです」と指摘する。

 芸能人は売れると収入が急増して金銭感覚が狂い、支出が増える。しかし、実際は安定した高収入ではなく、山と谷がある。

「投資に失敗したり、本業の仕事が減って、収入が足りなくなると、まともな金融機関ではないところから借金をせざるを得なくなります。その返済のために事務所を通さず、定価より安く仕事を受けたりします。実際に有名芸能人には、事務所を通さないで直接取引する裏メニューがあります。芸能人はギャラをもらえば、その会社の事業実態までは気にしていませんからね」と同プロデューサーは話している。