自民最強王国に挑む「EXILE作曲家」と「マッサン俳優」の気概

2017年10月18日 16時30分

乃木涼介氏(左)と真白リョウ氏

 衆院選(22日投開票)は公示直前の希望の党誕生による野党再編で、選挙区を明け渡し、出馬断念や国替えを余儀なくされた候補者も多い。大阪で選挙準備をしていた真白(ましろ)リョウ氏(41)と乃木涼介氏(53)は、ともに希望の党へ入党し、神奈川県に新天地を求めたが、あまりに強過ぎる相手が待ち受けていて…。

 神奈川11区(横須賀市、三浦市)は小泉純一郎元首相(75)の祖父から進次郎氏(36)まで4代にわたって、中選挙区時代を含めて引き継がれている“小泉王国”。選挙では対立候補にダブルスコアどころかトリプルスコアをつける圧勝劇が続き、前回は共産党しか対立候補を立てなかったほどだ。
 この小泉王国に挑戦状を叩き付けたのは、希望から出馬している真白氏だ。

 作曲家でEXILEの楽曲を手がけるなど、華やかな経歴の持ち主だが、3・11の原発事故を機に政治家を志し、小沢一郎政治塾を2年前に卒塾。昨年から地元の大阪12区で活動していたが、自由党が今回の衆院選で候補者擁立を見送ったため、希望に入党。希望と維新の選挙協力により大阪からの出馬がかなわず、空白区となっていた神奈川11区を“逆指名”した。

 公示1週間前に初めて横須賀入りしたが、道行く人々の視線は冷たい。しかしこの1年、大阪で毎日辻立ちして、鍛え上げていただけに「大阪でのヤジに比べたら大したことはありません」と真白氏は平然。小沢塾出身とあって、くまなく歩くドブ板はお手の物で、演説も新人らしからぬ堂々たる様だ。

「今の格差社会が生まれたのは小泉―竹中(平蔵・元経財相)の構造改革から始まっている。あえてここで立ったのは日本をぶっ壊した小泉純一郎へのアンチテーゼを唱えたかった」(真白氏)。小泉王国で行き場のなかった批判票の受け皿になりつつある。

 一方、神奈川15区(平塚市、茅ヶ崎市など)は河野一郎元副総理から洋平元衆院議長(80)、太郎外相(54)へと連なる“河野王国”の牙城。相手候補に影すら踏ませない独壇場に飛び込んできたのが、NHK朝ドラマ「マッサン」や多くの映画、舞台で活躍していた俳優の乃木氏だ。

 一昨年に子供を授かり、日本の将来に危機感を抱き、政治の世界に転身。民進党から大阪7区で公認され、当初は上西小百合氏(34)とのバトルかと思われたが、民進党がよもやの“消滅”。希望に入党したものの大阪での出馬が閉ざされた中、神奈川15区からの出馬を打診されたのは公示1週間前のことだ。

「何の準備もなく、河野さんと戦うなんて、普通だったらバカですよね」(乃木氏)

 だがこの1年、安倍一強政治の打破を訴え続けていたとあって、もはや選挙区事情は関係なかったという。

 事務所が公示3日前に決まるドタバタだったが、スタッフも増え、終盤戦を迎えて、手応えを感じているという。

「河野さんは脱原発を訴えていたのに内閣に入った途端、原発のゲの字も言わない。これがしがらみなんです」と鋭い突っ込みも入る。

 2人を応援する希望の松沢成文参院議員(59)は「しがらみのない政治をするには、政治と関係なかった人が出ることに意味がある。(情勢が厳しい中で)出馬する勇気は大したもの。候補者が出ることで、希望の党を応援してもらえるし、比例票の掘り起こしにもなる」と意義を訴える。

「一票でも多く自民党の票をひきはがしたい」(真白氏)、「声がかれるまで政策を訴えたい」(乃木氏)。果敢に挑む2人はドン・キホーテとなってしまうのか、それとも奇跡のジャイアントキリングを起こせるのか――。