インドネシアで大人気 JKヘビメタバンド「Voice of Baceprot」

2017年10月08日 11時00分

【アツいアジアの旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】インドネシアの若者たちがいま夢中なのが3人組ガールズバンド「Voice of Baceprot」(ボイス・オブ・バチェプロット)だ。活動3年でSNSから火がつき、今年ブレークした。イスラム女性が髪を隠すためかぶる布「ヒジャブ」を巻き、歌うのはバリバリのヘビメタ、メンバーは現役女子高生だ。彼女たちのムーブメントは現地で「ヒジャブ・コア」と呼ばれ、若者からは喝采が、保守層からは批判が浴びせられている。

 リーダーでボーカルとギター担当フィルダ・クルニア(16)は「初めてメタルを聴いたとき“何て反抗的な音楽なのかしら”って一発で気に入った」という。ドラムはエウス・シティ・アイシャ(16)、ベースはウィディ・ラーマワティ(15)。3人とも西ジャワ州ガレット生まれで、バンドの略名「VoB」は地元で話されるスンダ語で「うるさい!」という意味だという。

 英国大手メディアの取材を受けたり、地元テレビに出演するようにもなり、高校へ通いながら音楽活動を続けている。マネジャーは高校の音楽教師。主に米人気バンド「メタリカ」や「レイジ(・アゲインスト・ザ・マシーン)」などのカバーを歌っているが、オリジナル曲も増えている。

「インドネシアでもメタルは人気だが、全部男のバンドで、女の歌手はポップスが主流。メタルは不良の男のものというイメージのところに、ヒジャブ姿のJKバンドだから、保守層は仰天した」とは地元在住記者。

 インドネシアは東南アジア最大のイスラム教国家で、人口2億5000万人のほとんどがイスラム教徒だが、首都ジャカルタ在住会社員によれば「中東のイスラム社会に比べるとずっと寛容。酒も飲めるし、和食や中華レストランなら豚肉も出る。女性のヒジャブも義務ではない」。そこを逆手に取り、ヒジャブ姿でイスラムを強調するVoBを一部の原理主義者が敵視しているという。

 戒律は緩いインドネシアだが、IS(イスラム国)の影響もあり、ここへきて原理主義に回帰する動きがある。少なくとも数百人のインドネシア人がひそかにシリアやイラクへ渡り、IS崩壊に伴い帰国しテロを企てているともいわれる。標的は欧米の資本や価値観だ。

 VoBのフェイスブックやユーチューブには、賛美の声ばかりか脅迫や嫌がらせなども殺到しているという。宗教指導者からライブを中止するよう圧力がかかることも。極端な原理主義者はメタルどころか音楽そのものを否定しているのだ。それでも3人は「いつかアラブ諸国でライブをやりたい」と話す。JKがイスラムの伝統に風穴を開けるか。

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。3年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。