異色すぎる女性作家が語る「モテるおじさん論」

2017年09月26日 11時00分

作家の鈴木涼美氏

 慶応大と東大大学院卒、キャバ嬢、アダルト女優、日経記者、そして作家――。これだけのキャリアを持つ女性は日本、いや世界にもまずいないだろう。そんな超異色作家の鈴木涼美氏(34)が「おじさんメモリアル」なる著書を上梓し、大注目を集めている。“いろんな女の目”で今どきの「おじさん」を鋭く観察&冷静に分析した本は、実に興味深い。そんな才女に本紙は「キャバ嬢にだってモテるすてきなおじさん」になる方法を聞いてみたら意外な答えが――。

 高校時代は渋谷でギャルをしながらも、慶応大学に入学した鈴木氏。大学1年生のころからキャバクラで働き「AVに出演していた女の子やスカウトの人たちとも交流があったんです。慶大生がAVに出たら面白いかなって。派手なことをやってみたかったんでしょうねぇ」と振り返る。

 卒業後、東大大学院に入学と同時にアダルトを引退。大学院卒業後にはOLに転身した。

 日本経済新聞社の記者時代には「ネタ元と寝てネタを取る女」と噂されたこともあったというが「噂だけですよ。食事に行ったりはしてたけど、寝てはいない」と笑い飛ばす。

 5年ほど勤め、ウェブで連載していた「身体を売ったらサヨウナラ」が出版されるタイミングで退社。その約3週間後、「週刊文春」に「日経記者はAV女優だった」という記事が出た。この一件もあってか、出版した「身体――」は映画化されるまでになった。

 今回の「おじさんメモリアル」は、女子高生時代から、OL時代まで自身が見聞きした、おじさんが登場する。ざっと紹介すると――。

 女子高生時代には、CDショップで「オナニーを見せてくれたら1万円払う」と持ちかけた雑誌の編集者をかたる人。OL時代には地下室に水着の女性を集めて女性同士を戦わせて楽しむ人、さらに、キャバクラでは過去の偉人の名言を口にしてドヤ顔をする人や、常に別れ話をして同情を引こうとする人などなど。

 夜の街で“笑い者”になっているおじさんたちが列挙されているのだ。

「女の子ってよく話題や研究対象になることが多いけど、おじさんってクローズアップされることがあまりなかったじゃないですか。“体を売る少女たち”っていう本はあるけど、“買うおじさんたち”って本はなかったから、書いてみようと」

 それに「おじさんの方が面白い」と力説する。

「コミュニケーションが取れてるようで取れてなかったり、賢くて論理的のように見えるけど、すごく無駄なことしてたりするし、カッコつけてたりするけど、それがカッコ悪かったりする」と鈴木氏は言う。

 サイン会を行うと、集まるファンはおじさん度が高く、中には「おじさんを代表して謝ります」と言ってきたり、「面白いのは、こんな人いるんだねって人ごとのように言うおじさん」もいたとか。だが、これは決して人ごとではない。

「昼間、普通の顔してる普通のおじさんの話で、あなたの話であり、あなたの上司の話であり、部下の話なんです」

 ならば、夜の街ですてきなおじさんになるためにどう振る舞うべきか。まずは「目の前の女の子に興味を持つこと」だという。コミュニケーションが取れているようで実は取れていないケースだ。

「名言おじさんにしても、別れ話おじさんにしても、自分が中心だし、自分がどう見えるかということに興味がいっている。なんか小難しい話をしてみたり、冷たくしてみたり、そういうオレってイケてるって感じで、自分の中で完結しているんですよ。それって外から見たらすごく変です」
 さらに外見も大切だ。

「おじさんは、やっぱり若い人より劣っているんですよ。体臭もしてくるし、耳毛も生えてくる。年をとれば劣化するんです。でも、何もしない人は多いじゃないですか。そういうものには抵抗してもいい」

 とはいえ、相手に対する関心や外見は最低限のたしなみ。それ以外の部分では結局、「モテようとしていろいろやっている人ほど、残念な結果に終わっている。むしろ、やりたいようにやっていると結構、モテたりするんですよね」と鈴木氏。この「おじさんメモリアル」は、わが身を見直すバイブルと言っていいのかもしれない。

☆すずき・すずみ=1983年7月13日生まれ、東京都出身。2002年に慶応義塾大学環境情報学部入学。04年にAVデビュー。07年、慶応義塾大学を卒業し、東京大学大学院学際情報学府に入学する。09年に東京大学大学院修士課程を修了し、同年4月、日本経済新聞社に入社。都庁担当、総務省記者クラブ、整理部などに所属。13年に修士論文を元にした著書「『AV女優』の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』(青土社)を刊行。14年8月、新聞社を退社。同年11月「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)を出版し、17年7月には映画化される。