慶応義塾大学在学中の映画監督、松本花奈(19)が今、注目されている。14歳から映像制作を行い、高校時代には映画祭で数々の賞を獲得。最近ではアイドルグループ「HKT48」のミュージックビデオ(MV)監督に抜てきされた。AKBグループの秋元康総合プロデューサー(59)に自ら映画の企画を持ち込んだこともある松本。バイタリティーあふれる10代の女子大生映画監督の情熱に迫った――。

 ――8月2日発売のHKT最新シングル「キスは待つしかないのでしょうか?」のMV監督を務める

 松本:昨年の夏ごろ、秋元さんが書かれた長編小説「目薬キッス」(1995年)を映画化したいと思って、秋元さんの事務所に企画を持ち込んだんです。最初は事務所の場所も分からなくて…。映画祭で知り合った方のツテを頼って持ち込んで、そこから少し交流を持たせていただいた。HKTのMVのお話は突然、私のツイッターのダイレクトメッセージに運営の方からオファーをいただいて。もともとAKB48グループが好きだったこともあって。「めっちゃやりたいです!」と言ったんです。

 ――秋元氏とはどんなやりとりを

 松本:私が企画を持ち込んだ時は、熱い感じで「頑張れ!!」みたいに言ってくださって。MV撮影で事前に何か言われることはなかったけれど、終わった時に「いいMVをありがとう」というメールをいただきました。

 ――MVのテーマは「疾走感」と「絆」。10代の女性監督だからこそ、引き出せたメンバーの自然な笑顔が好評ですが、現場の雰囲気は

 松本:年が近いというのもあって、楽しくやらせてもらいましたね。同い年の宮脇咲良さんには「なんで映像をやろうと思ったんですか?」と聞かれて話をしたり。

 ――松本監督自身はアイドルに興味も?

 松本:ちょっとなりたかったんです(笑い)。小学生のころ、AKBの「大声ダイヤモンド」のMVがめちゃくちゃ好きで。最初に映像を撮りたいと思ったきっかけにもなっている。音楽が好きだったのもある。ともちん(板野友美)が好きで、その次は(篠田)麻里子さま。中学の時に大阪から東京に転勤で引っ越したんですが、友達に言ったら「AKBに入るの?」と言われたぐらい(笑い)。

 ――もともと女優としても活躍。竹内結子主演の映画「サイドカーに犬」(2007年)では、竹内に憧れる少女を好演。それがなぜ映像の道へ

 松本:出演する側(女優)を始めたきっかけは、ダンスがやりたくて。ちょうど家の近くに劇団があったので、ダンスをやるのと同時にお芝居も一緒に始めた。演じていく中でスタッフさんは撮影準備から撮影後と、長い期間作品に関われることが魅力的だと感じて。自分も撮る側に回りたいと思ったんです。

 ――女優に未練がなかったのか

 松本:タイプ的にドロドロになって這いつくばるのが好きで、裏方が性分に合ってるな、って。

 ――17歳で撮影した「脱脱脱脱17(ダダダダセブンティーン)」では新人監督の登竜門ともいわれる、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016で審査員特別賞と観客賞のダブル受賞

 松本:今は女優としてのお仕事はやっていないですし、作る側に専念したいと思ってます。

 ――学業との両立は大変?

 松本:高校の時は部活、勉強、映像とやっていたので、それに比べたら大学の方が時間に融通が利くので、割と楽になりましたね。編集作業は家でやったりしています。今、編集している作品もあって、今年の東京国際映画祭で上映する予定もある。見ていただけたらと思います。

☆まつもと・はな=1998年1月24日生まれ。大阪府出身。女優として活動する傍ら中学2年生で映像制作を始める。高校在学中の2014年、監督・脚本・編集を手掛けた映画「真夏の夢」が「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015」フォアキャスト部門に正式出品。16年の同映画祭に出品した映画「脱脱脱脱17」がオフシアター・コンペティション部門の審査員特別賞・観客賞を受賞した。