1本しか書いてないのに…沼田真佑氏「芥川賞」受賞に戸惑い

2017年07月20日 16時30分

芥川賞を受賞した沼田真佑氏

 第157回芥川賞・直木賞の発表が19日、都内で行われ、芥川賞には「影裏(えいり)」(文学界5月号)の沼田真佑氏(38)、直木賞には「月の満ち欠け」(岩波書店)の佐藤正午氏(61)がそれぞれ選ばれた。

 デビュー作で芥川賞を受賞した沼田氏は、いきなりのひのき舞台に緊張気味なのか終始、表情も硬い。カメラを向ける報道陣も「もうちょっとニッコリ、お願いしまーす」と、どうにか“受賞の喜び”を引き出そうと躍起だ。

 当の本人も「1本しか書いてないというのがあるので…。ジーパンを1本しか持ってないのにベストジーニスト賞を取ったみたいな…」と戸惑いを語り、笑いを誘った。

 受賞作は医薬品会社の岩手支店に勤める「わたし」の視点で描かれ、釣りに行くほど仲良かった元同僚の転職で疎遠になっていた最中、震災を通じて見えていた人格とだいぶ違う元同僚の人間性を知ることになる…という震災小説。

 沼田氏は北海道小樽出身。福岡市の西南学院大学卒業後は塾講師などをしていた。震災の翌年の2012年、両親が建てた実家に転がり込む形で岩手・盛岡に移住。2年ほどニート生活を送り、塾講師時代の貯蓄を食い潰したという。

「今、座っている場所からそのころの自分にどんな言葉をかけたいか」と聞かれると「半年後に自分が生きているかも分からないし、そのころの自分は聞く耳を持っていなかったので何も言わないほうがいいのではないか」とボソッと語り笑わせた。

 直木賞を受賞したデビュー34年目のベテラン作家、佐藤氏は長崎・佐世保在住のため、電話インタビューに応じた。60歳を過ぎての受賞に「いまさらとは思わないけど、ちらっと『今!?』って。今まで会わなかった直木賞に道で呼び止められて『え? 今から?』という感じ」と独特の表現で喜びを語った。