【ビートたけし本紙客員編集長の世相斬り】今のボクシング界ってのは、カネになる選手をいっぱい集めてるから、昔と興行が違う。

 前にラスベガスがシルク・ドゥ・ソレイユとか演劇で家族連れの客を集めて儲けた時期があった。客席1席がホテル1部屋と同じ値段で取れるもんだから大儲け。でもカジノがガラガラになった。カジノは24時間やってるけど、家族連れはカジノやらないからね。

 それでラスベガス全体が「やっぱり男の客を集めなきゃ」ってなって、UFCとボクシングで再生した。パッキャオとかメイウェザーとかデカイ試合をいっぱいやった。この前のパッキャオとメイウェザーの試合って、一番安い席で100万円だぜ。本当は18万円の席なんだけど全部転売されて、最低100万円出さなきゃチケットが手に入らない。リングサイドは120万円が4000万円に。まあ、とにかくラスベガスがボクシングで盛り返した。ボクシングを見て興奮した男の客は、カジノでバンバン賭けるしね。

 ところがUFCとボクシングでじゃんじゃん儲けようとするんだけど、タイトルマッチ以外はそれほど客が来ない。だからWBA、WBC、IBF、WBOと4団体にして王者を増やした。ミニマム級からヘビー級まで17階級あるわけでしょ。4団体×17階級も世界チャンピオンがいる。ミニマム級とライトフライ級は体重が3ポンド(1・36キログラム)しか違わないように、よほど重い階級じゃないと次の階級同士は2キロぐらいの差。だから、その階級の20番目ぐらいの実力しかない選手が、ある団体ではチャンピオンなんてこともある。

 そのうえスーパー王者、正規王者、暫定王者なんてのもいるし。暫定王者決定戦からやって、1つのタイトルでタイトルマッチを何回もやったり。そんなわけで、今のラスベガスは前座の試合がタイトルマッチなんてことになってる。

 そういう興行だから村田も挑戦権があるんだけど、もう1回挑戦するってなると、タイトルマッチであっても相当なカネを生まないと、やってくんないよね。だってミドル級ではスーパー王者のゴロフキンとアルバレスが9月にやるけど、それもファイトマネーが100億円って言われているからね。

 パッキャオとメイウェザーは160億円と100億円。じゃんじゃんデカイ興行になってる。それでもグッズと世界配信のペイビューで儲かる。たとえ村田がエンダムに勝ってWBAの正規王者になっても、WBAスーパー王者のゴロフキンみたいな怪物がいる限り強い王者と認められないから、ファイトマネーはそこまでいかないだろうね。

 WBOスーパーフライ級の井上尚弥はメチャクチャ強いけど、ラスベガスに行っても階級的にメーンイベントにはならないから前座に近い方の試合だろうな。