いまや日本中が注目している14歳の天才棋士が連勝記録をまた一つ積み上げた!! 将棋の史上最年少プロ棋士・藤井聡太四段が、18日に関西将棋会館(大阪市)で行われた「加古川青流戦」で竹内雄悟四段(29)との対局を制し、デビュー以来の公式戦連勝記録を「18」に伸ばした。歴代連勝記録で7位タイとなった藤井四段の強さの秘密を、戦後最年長の41歳でプロ棋士となった今泉健司四段(43)が分析した。

 プロ入り最年長と最年少とあって、何かと対比もされる2人はさる12日、関西将棋会館で鉢合わせした。藤井四段が17連勝を果たした第67期王将戦一次予選3回戦が行われていた時、隣の間では今泉四段が第30期竜王戦6組昇級者決定戦で、都成竜馬四段(27)と対局中だった。

 テレビ局などが藤井四段の出前の品を盛んに報じた昼休憩時には、食事部屋で今泉四段と藤井四段が隣同士で昼食をとった。藤井四段目当てに殺到した報道陣に集中力を乱されたためか、敗れてしまった今泉四段は「自分が負けたのは悔しかったけど、藤井君の方が大変だと思いますよ」と藤井四段を気遣う懐の深さを見せた。

 その藤井四段が、連勝を18と伸ばした。今泉四段は「『すごい!!』のひと言に尽きますよ。だてや酔狂で18連勝できるものじゃない。同レベルの人と指して連勝してるんだから、彼がかなりの実力を持っていることは間違いない」と断言する。

 そのうえで「彼は当然努力してるだろうし、才能プラス若さという武器がある。将棋の世界は早熟が断然有利な業界ですし、これからもどんどん強くなっていくだろう。ただ、今の将棋界のレベルは高い。B1やA級というランクまで行くと『すんなりとは行かない』と思っているはず。そのあたりは現実をドライに見られる子なんじゃないかと思います」とみている。

 藤井四段の強さについては、メンタル面を指摘する声もあるが「まだ分からない。14歳だし、これからですよ。今後、同レベル、格上と対戦して、とんでもない逆転負けをすることもたまにはあるでしょう。そうした経験でいろんなことを学ぶのでは」という。

 自身、プロへの登竜門である奨励会時代、あと1勝の場面で、攻めと守りの判断を誤るメンタルの甘さを出してしまい、プロ入りに失敗。2度の同会退会と介護士などの社会人生活を経てプロ入りを果たしただけに、その言葉には深みがある。

 今泉四段は奨励会時代、新手、妙手を指した者や、定跡の進歩に貢献した者に与えられる「升田幸三賞」を受賞。藤井四段の将棋の印象についてはこう表現した。

「光る手はあります。あくまで僕のイメージなんですが、棋士が『おー、なるほど』と思うのは一手だけなんです。それが見えているかどうか。藤井君は見えているのかもしれない。野球でいえば、プロと名の付く投手はツーストライクまではいい球を投げるはず。問題はラストボール。それがいいところに行くのがいい投手。藤井君もラストボールがいいところにいくイメージですね」

 相手を完璧に圧倒する“決め球”を持っているという印象なのだろう。

 この2人は同じ段位でもあり、今後の大会で対戦する可能性も。6月上旬に行われる「第2回上州YAMADAチャレンジ杯」でお互いに勝ち進めば対局を迎える。

「連勝記録を見ても強いことは分かってる。やってみたいし、やってみないと実感できない。僕と当たるまで連勝記録を継続しててもらいたいですね。他のプロも同じ考えで『(記録を止めるのは)俺に任せとけ』くらいに思ってますよ。心の中であっても『彼には勝てないな』と思ってるようじゃ、少なくとも僕の中ではプロじゃないし、そもそもプロになれていないと思う。全力を尽くして負けても、次は負けないぞって感じですね」

 将棋界を一層盛り上げるためにも、正反対デビューの2人の対決が待ち遠しい。