名古屋発の人気男性グループ「BOYS AND MEN」(以下、ボイメン)の田中俊介(27)が、6月3日に全国公開される「ダブルミンツ」で映画初主演を果たす。原作は中村明日美子氏によるダーク系BL(ボーイズラブ)漫画。同性愛、そして共依存まで踏み込んだ異色の作品に挑戦した理由や、その葛藤について語ってもらった。

 ――オファーを受けたいきさつは

 田中:クランクインの1年ほど前にお話しがきて、びっくりしました。ボイメンとしても武道館公演(2017年1月)の前、芝居の経験もまだまだ浅い状態で。でも内田英治監督とは面識があり、うっとうしいぐらい「お芝居をやりたい」と監督に言ってたんです。

 ――内容を知ったときの感想

 田中:僕自身、同性愛に対して真剣に考えたことが正直なかったので、一回では2人の関係をすんなりと受け入れられなかった。でも原作の話も絵のタッチもすごく美しく、その中にある狂気的な部分に衝撃を受けた。一瞬で理解できなかったけれど、一瞬でとりこになった。

 ――不安は

 田中:すごく難しい役だから、僕にできるのかという不安は正直あった。でも俳優としての契機になるというか、全身全霊をかけて臨めば、俳優人生が変わってくると思ったんです。ファンの方、いろいろな映画・芝居関係者の方が「あ、あいつ芝居に向けて本気なんだな」と感じてもらえるなと思った。だからその不安は、なんとしてでも成功させたい、僕にオファーしてくださった監督の思いを裏切りたくない、という気持ちに変わりました。

 ――キスなど同性との性的な描写がある

 田中:そうですね。同性愛というのは難しいテーマなんですけど、映画などで勉強していく上で感じたのが、たまたま同性だった、ということ。変な偏見を抱く必要はないと思った。

 ――参考にした映画は

 田中:監督から見ておけといわれたのが「ブエノスアイレス」「マイ・プライベート・アイダホ」、それに「ブロークバック・マウンテン」ですね。

 ――海外作ばかり

 田中:今回のダブルミンツは作風もそうですし、監督も原作を忠実に再現しつつ、内側の気持ちを引っ張り出すことを意識されていた。そんな深いところを追求していくと、ブエノスアイレスとかが近いのかなと感じた。

 ――田中さん演じる光央は弱い男だ

 田中:最初、自分一人で役作りをこなしていたときは、弱い部分をあまり表に出さないような芝居をしていた。暴力的、狂気の部分でそれを覆い隠す芝居をしていたんです。でもクランクインする前に、本読みやリハーサルを監督や(ダブル主演の)淵上泰史さんと何回かさせてもらったんですが、監督といろいろ話していくうちに「光央は弱い部分が出てしまう、ちっちゃいチンピラなんだ」とおっしゃってくださって。そこで気づきました。

 ――そういう光央だった

 田中:そうだとうれしいです。

 ――淵上さんとの共演は

 田中:初めてです。

 ――どうでした

 田中:淵上さんもすごく口数が多い方ではないので、初めてお会いして、僕自身もどこまで距離を詰めるべきなのかを悩んだ。ただこの作品には、外から見たら一見理解しがたい、2人だけの世界感があるじゃないですか。光央自身も、なんで相手の光夫を求めてしまうのか分からないと思ったんですよね。愛してるのか、ただ依存しているのか。自分たちでも分からない関係だと思ったので、変に距離を詰める必要はないのかなと思いました。後から聞いたんですけど、僕が役に入りやすいようにうまく距離を取ってくださってたみたいです。そういったところでいろいろと助けていただきました。

 ――撮影後は

 田中:(クランク)アップして半年くらいのタイミングで、ある番組で宣伝のため久々に再会したんですけど、(撮影中は)あまり打ち解けていなかったので、変に緊張しました。でも純粋に田中俊介と淵上泰史という2人で話をしたときに「あ、めちゃくちゃ楽しい方なんだ」って(笑い)。いろんな話で盛り上がりました。

 ――ボイメンのメンバーからは何か

 田中:メンバーにはあまり話してなかったんです。役作りでどんどん痩せていく僕を心配してましたね。

 ――何キロ落とした

 田中:14キロ。体を鍛えてたから結構ゴリゴリだったんですけど、光央になるには、それが嫌で、筋肉も脂肪もそぎ落としたいと思った。ただボイメンの活動があったので、一気に落とすとそっちに悪影響が出て、迷惑かけてしまうかなと思ったんです。1年前からお話を頂いたんで、長期間で痩せていこうと考え、本格的にダイエットに力を入れたのはクランクインの半年前。じわじわ痩せていくつもりだったんですが、市川光央に近づきたい気持ちが強すぎたのか、2か月ぐらいで十数キロ落ちちゃって。残りの4か月間ぐらい、維持するのが大変でした。

 ――どうやって痩せた

 田中:毎日朝晩走って、筋トレは一切封印です。食事も葉っぱばかり。ドレッシングも嫌だったので、重宝したのがめかぶ。めかぶをかけて、めかぶのちょっとした塩味で葉っぱを食ってました。

 ――暴力と同性愛を扱うだけに、ファンの反応は気にならないか

 田中:ボイメン結成当初から芝居が好きだ、俳優になりたいと公言してきたのでそれを知ってくださっている。田中俊介は本気で芝居をやっていきたいんだな、というのが見てもらえば伝わると思う。抵抗がある方もいるかもしれない。でも覚悟して見てもらって、田中の本気を感じてもらいたい。

 ――次にやりたいのは

 田中:戦争など、昭和の時代の話ですね。僕自身映画でいろんなことを勉強させてもらっている。今の若者が知らない世界を勉強して、映画を通して発信できたら、役者として素晴らしいことなのかなと思います。

【あらすじ】高校時代強者と弱者だった2人の「いちかわみつお」こと市川光央(田中)と壱河光夫(淵上)。ある日、壱河に光央から「女を殺した」という電話が入る。

 ☆たなか・しゅんすけ=1990年1月28日、愛知県生まれ。ボイメン始動時からのメンバー。身長175センチ。