俳優の中井貴一(55)が24日、ナビゲーターを務めるBS―TBSの2週連続ドキュメンタリー「中井貴一 ヨーロッパ大紀行II 世界を創った天才たちの素顔 ダ・ヴィンチVSミケランジェロ」(6月13日・20日午後9時放送)のPRのため、都内同局で会見。その中で「コンプライアンス」が幅を利かせる芸能界に異を唱えた。

 中井は約500年前の前後を最盛期とするルネサンス期が果たした役割を見いだすため、イタリアでミケランジェロの足跡を追った。子孫の男性発明家に出会うなどの体験を重ねて「自由な変人が認められるようになったのがルネサンス。それが今の日本に必要」と感じるようになった。このメッセージを番組を通して伝えたいという。

 雑誌「新潮45(3月号)」では「撮影現場の『コンプライアンス』狂騒曲」と題した手記を寄稿。芸能界が規制やルールに縛られて、作品の内容に制約を受ける現状を憂えた。中井は会見でも最近の芸能界には「閉塞感が強いじゃないですか」と言及。その背景には「コンプライアンス(がある)ということになる」と語りだした。

 昔の視聴者が役者の演技を「うその前提」で見ていたのが「いつの間にか現実を重ねることの幅が大きくなりすぎちゃった。もっとうそを楽しんでくれたらいいのに」と心情を吐露。さらに「芸能界はヤクザな商売だった。いつの間にか(芸能人が)市民権を得たのは良いけど、異常な市民権を得てしまうと束縛しかなくなっていく」とも語り、「もっとうそを楽しんでくださいよ」と訴えた。

 テレビ局関係者は「中井さんの言葉に共感する番組制作者は多い。番組スポンサーはネットの反応や、たった数人のクレーマーの声を気にして内容に口出ししてくる。自由にやらせてくれというのはテレビマンの本音です。こういった声がもっと芸能人から続いてほしい」とうなずいた。