【アイドル殺人未遂】軽い一審判決…消せない恐怖

2017年03月02日 11時00分

現場となったイベント会場前(2016年5月)
現場となったイベント会場前(2016年5月)

 また狙われるのか…。昨年5月、東京・小金井市のライブ会場でアイドル冨田真由さん(21)をメッタ刺しにした殺人未遂と銃刀法違反の罪に問われた岩埼友宏被告(28)の裁判員裁判(阿部浩巳裁判長)が28日、東京地裁立川支部で開かれ、被告に懲役14年6月(求刑17年)の判決が言い渡された。法廷でも、反省どころか凶暴な素顔を見せた被告が出所後、再び冨田さんを襲う可能性は低くはなさそうだ。冨田さんが、身を守る方法はあるのか?

 23日に行われた被害者意見陳述の最中に、突然「じゃあ(俺を)殺せよ!」などと声を荒らげ、退廷させられた岩埼被告はその凶暴な態度で再び冨田さんを恐怖のドン底に突き落とした。

 この日の最終陳述で「服役する中で忍耐力を身に付けまっとうな人間になります」などと誓ったが、その舌の根も乾かぬうちに「殺意は否定します」などとも言い放った。

 代理人弁護士によると冨田さんは裁判所の控室で判決を聞き「(求刑の)17年でも短いと思っていたのに…」と話した後、絶句したという。判決を受けて寄せたコメントには「たった約14年後には、犯人が塀の外を歩いている。そう思うと、今から不安と恐怖しかありません」と胸の内をつづっている。

 実際、14年半の満期で出所したとして、冨田さんに付きまとった岩埼被告はまだ精力と体力が衰えていない40代だ。女性の力では太刀打ちできない。

 今後、検察に控訴を求める意向だが有期刑である以上、常に岩埼被告の出所におびえて生きていかなければならない。首や胸、背中など34か所も刺され、一時意識不明の重体になるも奇跡的に回復したが、後遺症やPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされ、顔にも消えない傷が残った。それでも、「歌だけは奪われたくない」と歌手復帰を夢見ている。

 だが、犯罪ジャーナリストの北芝健氏は「ストーカーが出所後にまた被害者を襲った例はある。犯人が取り調べた刑事を逆恨みし、その刑事が転勤したのに、出所後に居場所を捜し当てて刺した事例もある。岩埼被告が刑務所でため込んだ怒りを出所後に爆発させる可能性はある。気の毒だが冨田さんはこの先の人生で、岩埼被告から身を隠すために、かなり制限された生活を強いられるだろう」と指摘する。

 まず、手術や治療代など医療費のほかに、岩埼被告の行動を監視するための調査費用、高セキュリティー住宅の賃料、場合によっては、ボディーガード代などの負担も考えられる。犯罪被害給付制度もあるが、被害と“出所の恐怖”により、かかる費用は相当な額になり得る。

「出所後の被告の居住地区も含めて調査会社に依頼して行動確認を行い、もし冨田さんにまつわる土地の周辺をウロウロしていたら、本人がいくら懐かしんでいるだけだと主張しても居場所を突き止めようとしている証拠になる」と北芝氏。

 また、重大犯罪の被害者は氏名や住居、職場を変えて加害者から身を隠しているケースが多く、心身ともに自由が大幅に奪われる。「冨田さんも養子縁組や結婚で姓を変えた方がよいが、十数年後に主婦やOLをやっていてもSNSは、一生やるべきでない」というから実質、メジャーシーンでの音楽活動の道は閉ざされたようなものだ。

「米国ではマフィアを裏切って証人になった人には、軍の基地内の居住地区があてがわれる。岩埼被告が絶対に入ってこられない米軍基地の職員になるのが物理的には一番安全な生き方。日本の現行の法律では、公的機関が被害者をかくまったり守れないのが現状で、岩埼被告がシャバに出る以上、日本中どこにいても捜し出される可能性はあり、冨田さんは常に恐怖との闘いとなるだろう」(北芝氏)

 今後14年半の間に、ストーカー犯が出所の際にはGPS装着やホルモンを抑制する化学的去勢が義務化されるなど、被害者を守る制度が整備されないことには、冨田さんの不安と恐怖はいつまでも解消されない。