バトル“第2幕”が勃発――。先月末の米豪電話首脳会談で、オーストラリアのマルコム・ターンブル首相(62)に対して激高したことが明らかになったドナルド・トランプ米大統領(70)が、今度は俳優で元カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガー氏(69)を公の場でおちょくった。自身がホスト役を務めていた人気テレビ番組に言及し、後任のシュワ氏を攻撃。同氏もただちに反撃し、先月にも両者の間で批判の応酬があった同番組をめぐるバトルが再び火を噴いた格好だ。

「我々は『アプレンティス』で偉大なる成功を収めた。大統領になってこのショーを去らなければならなくなり、彼ら(番組側)はビッグ、ビッグなムービー・スターを雇った。アーノルド・シュワルツェネッガーが私の後任となったが、結果はご存じの通りだ」

 首都ワシントンに各界有力者らが集まり毎年2月に開かれる「ナショナル・プレーヤー・ブレックファスト」の場でスピーチを行ったトランプ氏は、「一般には厳粛な場」(ニューヨーク・タイムズ紙)で、自身がホスト役をしていたテレビ番組「アプレンティス」の話題に触れた。

 続けて「視聴率はひどく落ち込んだ。もうトランプ(氏がホストをしていた当時の人気)に二度と、絶対に勝てないだろう。私はただ、この視聴率のことでアーノルドのために祈りたい」。皮肉を込めたジョークで聴衆の笑いを誘い、自らも笑みを浮かべた。

「徒弟」を意味する番組タイトルの「アプレンティス」は、就職にまつわるリアリティー形式のショー。トランプ氏の決めゼリフ「ユー・アー・ファイヤード(お前はクビだ!)」は同氏および番組の代名詞のようになっている。その後任ホストがシュワ氏だった。

 シュワ氏体制での視聴率はトランプ氏時代に及ばない。それを公の場でおちょくられたシュワ氏はただちに、ツイッターにメッセージ動画を投稿して反論した。

「ヘイ、ドナルド! 素晴らしいアイデアがあるよ。仕事を交換しようじゃないか。あなたが私の後を引き継ぎ、視聴率を上げる。私はあなたの職を受け継ぐ。そうすればみんな再び、安心して眠れるよ」

 移民や難民問題での厳格すぎる姿勢で猛反発を受けているトランプ氏に対し、オーストリアから米国に渡ったシュワ氏が批判を返した。カリフォルニア州知事時代に大統領就任の可能性も話題になったが、移民1世のため制度上不可能と言われた。

 シュワ氏の反論動画は短いものだったが、今回のトランプ発言に対しては同氏の広報担当者もツイッターで「アーノルドは、トランプ大統領が就任時では歴代最低だった自身の支持率を向上させることを祈っている」と声明を発した。「ナショナル・プレーヤー・ブレックファスト」の「プレーヤー」(祈り)にひっかけてシュワ氏を攻撃したトランプ氏に、こちらも同様に「祈り」を使って反撃した。

 そもそも「アプレンティス」をめぐるバトルは先月に勃発していた。シュワ氏のホストで新たに放送が始まると、視聴率がトランプ時代を超えなかったことで、トランプ氏は「視聴率王に比べたら完敗だ」とこき下ろした。一方、シュワ氏はツイッターでリンカーン元大統領の就任演説を引用して「私たちは敵ではない」と呼び掛け、「視聴率を稼ぐためにささげた努力を今度は全ての米国人のためにささげてほしい」といさめた。

 シュワ氏についてトランプ氏はツイッターで、大統領選で競った「民主党候補クリントン氏を応援した」と恨み節を投稿している。シュワ氏は西海岸カリフォルニア州のトップを務め、同州にある映画の街ハリウッドには民主党シンパのスターが少なくない。対するトランプ氏は東部ニューヨークを拠点としている。

 先月末のターンブル首相との米豪電話首脳会談では、オーストラリアへの密航者を米国に移住させる合意の継続を求めた同首相に激高したトランプ氏。内外でバトルが絶えない。