2014年1月に亡くなった、やしきたかじんさん(享年64)をめぐる2つの裁判が29日、東京地裁で同時に行われた。

 1つは故人と妻・さくらさんの闘病生活を描いた作家・百田尚樹氏(60)の著書「殉愛」でプライバシーを侵害されたとして、たかじんさんの長女(43)が発行元の幻冬舎に1100万円の損害賠償などを求めていた訴訟で、地裁は29日、幻冬舎に330万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 併せて求めていた出版差し止めの訴えは棄却。判決を受け、原告代理人の的場徹弁護士は「判決文を精査していないので、今後のことはこれから。控訴するかどうかも言えない」とした。

 もう1つはさくらさんが週刊誌「女性自身」の記事で名誉を傷つけられたとして、発行元の光文社に損害賠償を求めた裁判。この日、証人尋問が開かれ、さくらさん本人が初出廷した。

 さくらさんは全身黒の喪服のようなパンツスーツ姿で、手には白いハンカチ。目鼻立ちはくっきりしているが、全体的にやせている印象を受けた。

 白熱したのは、たかじんさんの死の直前のやりとりだ。被告側証人で出廷した元マネジャーのK氏が「師匠から『娘と原告(さくらさん)は金にうるさいけど、(遺言状で)うまくやっとくから心配すんな』と伝えられた」と証言すると、さくら氏は「そのようなことを主人がKさんに言うとは思えません」と完全否定。

 その根拠として「私自身が何も望んでいないからです。娘さんによくするよう伝えていたくらいです」と述べ、聖母マリアばりの博愛精神を見せた。当時たかじんさんとK氏の関係は悪化しており「主人は『K氏をクビにしたい』と言っていた」とも付け加えた。

 双方の主張は真っ向対立し、何が真実かわからない状況。次回裁判は9月1日に開かれる。