ミイラと言えば、エジプトのファラオたちが自らの遺体を後世まで保管するために作った物が連想されるだろう。

 だが、実際には世界中にミイラは存在している。エジプトのミイラのように工夫した物、保存状態が良く結果的に死体がミイラになってしまったものなど様々だ。日本にも、即神仏という僧侶のミイラが各所に残っている。こちらは石室に入って経を唱え続け、最終的には仏になるという即身成仏の行をした僧侶のものであり、最後には水すら絶つ過酷な断食を行うことで結果的にミイラになったものだ。

 いずれもミイラといえば干からび、肌の色は茶褐色に変色した恐ろしい外見をしているものを思い浮かべることだろう。

では、生前と同じ姿を保ち続けるミイラは存在するのだろうか。そのミイラはイタリアに存在する。イタリア・シチリアはパレルモ、カプチン会の聖ロザリア礼拝堂。ここに、世界一美しいと言われている少女のミイラが存在する。

 この少女の名はロザリア・ロンバルド。軍の将軍の娘に生まれたが、肺炎にかかりわずか2歳でこの世を去ってしまう。キリスト教の一派であるカプチン会には変わった埋葬方法がある。それは、死者に生前と同じような服を着せ、そのままの姿で納骨堂に収めるというものだ。勿論、そうすると年月が経てば死体はミイラのようになり、次第に骸骨へと姿を変えていく。実際、聖ロザリア礼拝堂を初めとするカプチン会の教会には、多くの死体が衣服を身につけたまま立ち並び、あるいは横たわった姿で埋葬されている。

 彼女もカプチン会の風習にならい、埋葬されることになったのだが、彼女の父親は医師に頼んで「特殊な防腐処理」を行った上で埋葬した。その結果、今にも息を吹き返しそうなほどみずみずしく、生前の美しさを保った状態のミイラが生まれたのである。なお、これほど手を尽くして防腐処理が行われたにもかかわらず、彼女の遺族は死後数年で参りに来なくなってしまったという。

 このミイラの製法は永らく不明のままであったが、2009年にイタリアの生物人類学者のピオンビーノ・マスカリ氏が調査を行い、防腐処理を行った医師の親族を発見。彼らの元に残されていたメモから、ホルマリン・塩化亜鉛・アルコール・サリチル酸・グリセリン・パラフィンを用いて作製したものであることが判明している。

(提供=ミステリーニュースステーションATLAS