政治資金の私的流用疑惑で“クビ宣告”が出されていた舛添要一東京都知事(67)が15日午前、辞職の意向を固めた。二枚腰とも言える粘り強さで都議会や世論からの辞任圧力をかわし続けてきたが、力尽きたのか一転して退陣。しかし、前日には「失うものは何もない」と言い放ち、これが与党にとって“無理心中”のごとき恐ろしい行動に出る「予告」とみられていた。その内容次第では、7月の参院選で自民・公明の両与党に猛烈な逆風が吹き荒れることになるという。

「子供のことを言うのはなんですが、高1の娘と中1の息子がいます。毎朝、テレビに追いかけられ、泣きながら帰って来る。妻にもカメラを回して『やめてください』とガーガーと叫んでいる映像ばかり流して『変な女』と報じられます。子供も殺害予告をされている。子供を守るために、すぐにでも辞めたいけど、都政を混乱させないようにやってきた。人格的に辱められ、失うものは何もない」

 舛添氏は14日、こだわりを見せる8月のリオデジャネイロ五輪までの続投について、妻や子供の境遇を引き合いに出した“お涙頂戴戦法”で、都議会に最後のお願いに出た。この行動が伝えられるとニュースを流すテレビ局へのツイートのほか、ネット上に「誰のせいでこうなったと思っているんだ?」「言ってる意味がわからない」などと、自業自得を指摘する都民、国民の声が渦巻いた。だが、舛添氏の狙いは都民への泣き落としではない。

 自公の都議らは、舛添氏が放った最後の言葉「失うものは何もない」というフレーズに戦慄を覚えたという。

 都議会関係者は「舛添氏にとってリオ五輪は政治家としての集大成。それが目前で消滅しそうな雲行きに納得がいっていない。今回の舞台裏のやりとりを、全部ブチまける可能性がある」と語る。

“舞台裏のやりとり”とは何のことか。別の関係者がこう続ける。

「疑惑発覚後も与党は7月の参院選など政治スケジュールを考慮し、舛添降ろしには消極的だった。舛添氏との間で『リオ五輪を“花道”に9月辞職』という密約が交わされていたという情報がある。舛添氏もその約束を信じてここまで耐えてきたが、土壇場で与党側がハシゴを外した。舛添氏の不信感は相当なもの。『裏切られた』という気持ちが強い」

 不信任案が可決され、ブチ切れ暴走モードに突入した舛添氏が、密約なども含め裏の政治的駆け引きを暴露する――そうなると大混乱に陥るのは自民、公明の両党だ。

 騒動の渦中、永田町、都議会、五輪関係の諸団体のドンたちや自民・公明の大物議員がどう動き、舛添氏にどんな言葉を掛けてきたのか? 表向きは国民の怒りに耳を傾けながら、裏でボードゲームのように政局を操っていたとしたら…。それらすべてが表に出れば、7月の参院選を前に「国民無視」といった批判が巻き起こる可能性は大いにある。

「与党側が恐れているのは、まさにそこだ。舛添氏が死に体であることは確かだが『失うものは何もない』とまで言い放った今は無敵。事を収めるには、ハシゴを外した与党側が、何らかの“対価”を支払う必要がある」とは政界関係者。

 もはや“クビ”は避けられなかった土壇場で舛添氏は、涙を流しながら与党を“恫喝”していたと言ってもいい状況だ。この脅しに自公の幹部たちはどう応えるのか?

 ようやく都庁を去ることになった舛添氏だが、だからといって一連の政治資金疑惑がチャラになるわけではない。与党はその辺りの追及を緩めるのか、それとも辞職後の転職先でもあっせんして“口封じ”をするのか。

 前出の都議会関係者は「失職すれば、舛添氏はただの人で、もはや政界復帰の目はなくなる。民間企業や団体で仕事をしようにも企業イメージを著しく損なうため引き受け手はいないだろう。舛添氏が反抗的なのは、失職後の転職活動を考えての駆け引きとみる向きもある」と話す。

 まさか東京五輪関連の団体に天下ったり、都が運営する美術館の館長にしれっと着任するなんてことは…。

 一寸先は闇の政治の世界。今後も何が起きてもおかしくない。