【アイドル刺傷事件】元刑事の犯罪社会学者が警察の後手対応を批判「警官配置すれば防げた」

2016年05月23日 16時00分

刺傷事件の現場となったイベント会場前に置かれていた冨田さんの写真が載った告知

 東京・武蔵野市在住の現役女子大生アイドルが、男性ファンにナイフで20か所以上メッタ刺しにされ、意識不明の重体となった衝撃の事件から一夜明けた22日、当日の詳細が明らかになった。現場では容疑者が返り血を浴び、無表情で立ち尽くしていたという。また、担当の警視庁武蔵野警察署、小金井警察署の対応に疑問が噴出。元同庁刑事の専門家は「責任問題だ!」と激怒した。

 警視庁などによると、事件が起きたのは21日午後5時6分ごろだった。東京・小金井市のライブハウス出入り口前で、冨田真由さん(20)が住所・職業不詳の自称岩埼(いわざき)友宏容疑者(27)に刃物でメッタ刺しにされた。

 冨田さんは都内の大学3年生で、アイドル活動をしていたが、最近はシンガー・ソングライターに路線変更していたという。出演予定だったライブハウスに入ろうとしたところ、岩埼容疑者に襲われた。

 岩埼容疑者は小学校から柔道が得意でスポーツ推薦で地元・群馬の高校に進学したが、人間関係のトラブルなどからすぐに退学。いくつかアルバイトを経験した後は、数年前に「庭師になりたい」と話し、見習いとして京都で暮らしていたという。

 岩埼容疑者は冨田さんのファンで、その行動が徐々にストーカー化。冨田さんの公式ツイッターに攻撃的な書き込みをするようになったという。

 1月ごろ、岩埼容疑者とみられる人物が「腕時計をプレゼントする意味を知っていますか?大切に使ってくださいね」と冨田さんに腕時計を贈った旨を記した。しかし相手にされずにいると、3月に「フラれたから殺すとか過激だよね~」、4月に「そのうち死ぬから安心してね」と挑発的なコメントが相次いだ。

 岩埼容疑者は「プレゼントを贈ったが、送り返された。問いただしてもあいまいな答えをされたのでカッとなって刺した」と供述。小金井署は殺人未遂容疑で捜査を進めている。

 事件から一夜明けた22日、このライブハウスのオーナーである島さとし氏が報道陣の取材に対応。現場を目の当たりにしたそうで、岩埼容疑者について「無表情で立っていた。シャツに血がついていた。手は血だらけだった」と証言した。

 焦点の一つになっているのが、担当した武蔵野、小金井両署の対応の是非だ。

 冨田さんは今月9日に、居住地の所轄である武蔵野署に初めて出向いて相談。事件前日の20日には、21日のイベント出演を伝えている。

 武蔵野署は、ライブハウスのあるエリアを管轄する小金井署に「110番があったら応じるように」と依頼した。

 ただ武蔵野署は「ただちに危害を加えるものではない」と判断し、岩埼容疑者には接触せず、警視庁本部の担当部署へ報告しなかった。小金井署も事件当日、ライブハウス周辺に警察官を配置しなかった。

 現役時代に凶悪事件を担当した警視庁OBで犯罪社会学者の北芝健氏は「両署の対応は怠慢。急迫不正の侵害の芽があった」と切迫性があったとし、後手に回った対応を厳しく断罪。

「相談があればまず調べるべき。最低でもイベント当日に私服警察官を配置しなければいけなかった」

 特に小金井署の対応を疑問視。「小金井署は、例えば丸の内署(千代田区)や愛宕署(港区)のようにデモ対応に駆り出されることはない」

 警視庁が発表している都内の自治体別刑法犯発生件数(今年3月末時点)で、トップは新宿区=1809件、次いで江戸川区=1657件、世田谷区=1580件と続く。

 対して武蔵野市=416件、小金井市=323件と1桁も違う。

「米国当局なら相談があればストーカーする人物に対し、警告に出向く。前科はあるかDVをやっているか照会する」

 前出の島氏も警察に対し「私がしゃべることではないけど、もう少しどうにかしてほしかった。近くで(警察官が)待機してもらっていれば」と唇をかんだ。

 警視庁生活安全総務課は「対応が適切だったかは、捜査を通じて把握したい」としている。