12日に肺炎による多臓器不全のため死去した演出家の蜷川幸雄さん(享年80)の通夜が15日、東京・青山葬儀所で営まれ、芸能関係者やファンら約1600人が弔問に訪れた。

 取材に応じた俳優の西岡徳馬(69)は1974年に上演した「ロミオとジュリエット」以降、ともに仕事をしてきた。「四十数年一緒にいたので、蜷川さんからは『徳馬は戦友だからな』と言ってもらっていた。だから蜷川さんは戦友。戦友が壮絶な戦死をした感じです」と無念さをにじませた。

 蜷川さんの病状は昨年から聞いていたそうで、「前に『何で、そんなに仕事するの?』って聞いたら、『ただのジイさんになるのは嫌だから』って言っていた。僕も蜷川さんみたいに自分がやめるって言うまでやりたい」と話した。

 また、2010年に死去した劇作家で演出家のつかこうへいさん(享年62)と蜷川さんの“対談秘話”も公開した。かつて、つかさんから「蜷川さんと会わせてくれねえか」と頼まれた西岡が、東京・帝国ホテルで蜷川さんを紹介。「新たなスターをつくりたい」という思いを吐露したつかさんは「俺も使うから蜷川さんも使ってくれ」と頭を下げたそうだが、なぜか蜷川さんはその要望に応じることはなかったという。

 歴史的な対談は不調に終わったが、西岡はそれでも「お互いリスペクトしていたと思う」と日本演劇界の“2大巨頭”の胸中を推測した。

 さらに西岡は「酒は飲まなかった。稽古が終わるとすぐ帰っちゃう。(飲み屋で)俳優と演劇論を戦わせたりするのが嫌みたい。使わなきゃとか、しがらみとかできるからかな。一線を引いていた」と明かした。