本紙スクープの女医タレントによる診療報酬詐欺事件で逮捕、起訴された脇坂英理子被告(37)の初公判が11日、東京地裁で開かれた。法廷で改めて明らかになったのは同被告の異常な金銭感覚。借金漬けにもかかわらず、ホスト遊びを繰り返し、1300万円以上を散財。母親にも金銭をせびり、4000万円を肩代わりしてもらっていた。情状証人として出廷した母親は娘の更生を約束したが、周囲からは厳しい声も飛んでいる。

 法廷での脇坂被告は3月の逮捕以前に「セクシー女医」と呼ばれていた当時とはまるで別人。すっぴんで、パジャマのような上下スエット姿。根元の黒くなった金髪を後ろで束ねており、“ヤンキー”のようだった。

 起訴状などによると、脇坂被告は2003年に医師国家試験に合格し、大学病院に勤務。12年に千葉県内で美容皮膚科などのクリニックを開き、タレントとしても活動を始めたが、早々と資金繰りに困り、数千万円の負債を抱えた。このため、詐欺の指南役である会社役員・早川和男被告(39=詐欺罪で公判中)らと共謀し、12年11月~14年9月の間に自身経営のクリニックで患者14人を何度も診察したように装い、8自治体から診療報酬約154万円をだまし取った罪に問われた。脇坂被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。

 11年に夫と離婚していたことも明らかにされたが、特筆すべきは脇坂被告の異常な金銭感覚だ。

 東京・芝浦のマンションのローン5000万円のほか、クリニックの開業資金で計6500万円の融資を受けながら、ホストクラブ4店舗で1300万円以上を散財。ブランド品のバッグや靴などを買いあさり、情状証人として出廷した脇坂被告の母親いわく「部屋はまるでゴミだめ」。口グセは「お金がない」で、娘に泣きつかれた母親はこれまで4000万円を肩代わりしたという。ポンと出す親も親だが…。

 かねてその豪遊や散財ぶりを自らネット上などで“誇示”していた脇坂被告。法の裁きを受ける場で、荒いカネ遣いが改めて浮かび上がった。

 この日は詐欺罪で一緒に起訴された、ビジネスパートナーの永島ジェームス史也被告の初公判も並行して行われた。

 一時期、脇坂被告の資金を管理していたジェームス被告は「数か月に一度、ホストクラブやタクシー、美容室の領収書をまとめて渡される。少なくて30万円、多い時は数百万円あった」と浪費グセを証言。脇坂被告についていけなくなり、13年9月にたもとを分かったという。母親は脇坂被告の金銭感覚をとがめた上で「子供のようですが、今後は私が収入を管理します。引っぱたいてでも従わせます」と宣言。続けて「でも、親としては絶対に見放しませんから。私が死んだら妹が面倒を見ますから」と情状酌量の願いを訴えた。

 同被告は母の切実な言葉が胸に響いたのか、顔をしわくちゃにして大号泣した。

 だが、脇坂被告を知る関係者からは「彼女の浪費グセはビョーキ。今さら質素な生活なんてできるわけがない」と厳しい声も飛んでいる。

 量刑について、日大名誉教授(刑法)の板倉宏氏は「被害額が154万円で済むのなら、懲役3年、執行猶予5年といったところ。ただ、(一連の診療報酬詐欺事件をめぐる)今後の捜査で(裁判中に)被害額が増えれば、悪質な手口ということもあり(訴因変更により)実刑で懲役3年が出ることも考えられる」。

 医師免許の剥奪もささやかれるが、板倉氏は「医療行為に関する犯罪ではないので、医師免許を取り上げられることはないと思う」とした。

 次回公判では脇坂被告の被告人質問などが行われる。