先月26日、胃がんのため死去した作家でシャンソン歌手の戸川昌子さん(享年85)の通夜が4日、都内で営まれ、400人が参列した。

 5年前に末期がんの宣告を受けた戸川さんは、喪主を務めた息子でシャンソン歌手のNERO(38)と何度も話し合った結果、最後までステージに立って歌い続けたいという思いを貫き、入院する前日までNEROと一緒にステージに立った。しかし今年1月から痛みが強くなり、静岡県内の病院で緩和ケア治療に取り組んでいたが、帰らぬ人となった。

 NEROは「最後のステージはかっこよかったねと話していたら、痛みがひどくなって。分かっていたのかもしれませんね」と振り返った。最後の5年間は寝食をともにし、特に舞台については「背中で見せてくれた。悔いはない。世界で一番誇りに思う母であり師匠」と涙ぐんだ。

 最期には立ち会えなかったものの「苦しまず、眠るように目を閉じた」という。

 戸川さんは1957年ごろから、東京・銀座にあった日本初のシャンソン喫茶店「銀巴里」に出演して、シャンソン歌手として活躍。

 62年、自身が住んでいた集合住宅「同潤会アパート」を舞台としたミステリー「大いなる幻影」で第8回江戸川乱歩賞を受賞した。翌年には「猟人日記」を発表し、直木賞候補になりベストセラーとなった。

 64年に「猟人日記」が映画化された際、自身も女優として出演。以降、テレビドラマ出演やコメンテーターなど幅広く活躍し、80年代にはフジテレビ系バラエティー番組「いただきます」(84〜89年)にゲストとしてたびたび出演し、MCの小堺一機(60)らとお悩み相談トークを繰り広げ人気となった。

 77年、46歳のとき(本人は女性誌のインタビューでは48歳のときと語っている)にNEROを出産。当時の最高齢出産として話題になった。

 戒名は浄賢院楽音文昌大姉。