フジテレビ系で放送中のドラマの設定が、介護職の人材確保に影響を及ぼす内容だとして、日本介護福祉士会は17日までに、フジテレビに配慮を求める意見書を出した。ドラマは「月9」の「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」。高齢者介護施設に勤める主人公が過酷な労働環境で働いている。

 同会がホームページで公開した意見書によると、同会に「本当にあのような環境なら、身内の介護の資格取得をやめさせようと思う」とのメールが届いたという。

 同会はフジテレビに対し「給与の低さや労働環境の悪さが言いたいわけではなかったことは十分承知していますが、影響の大きさも考えていただきたいと思います」と配慮を求めている。

 フジテレビは「さまざまな方から監修を受け、実際の介護の現場を取材した上で制作しておりますが、貴重なご意見として今後の参考にさせていただきます」とコメントした。

 実際はどうなのか。同ドラマを毎週見ている介護福祉士は「過酷なものは過酷なんだから、そう演出して何が悪いのでしょう? 過酷な現場を知らない厚生労働省の天下り団体が『奴隷の集まりが悪くなる』と思ったんじゃないですか。過酷なんだからもっと給料を上げて環境を良くしてほしい」と語る。

 介護福祉士は、介護業界でキャリアを積まないと受験すらできない資格だ。チェーン展開しているある老人ホームの顧問はこう指摘する。

「ドラマで介護業界の夢が崩れたら、受験料収入が減るし、介護福祉士より下位資格あるいは無資格の介護従事者が減ると、介護業界における介護福祉士の優位性がなくなるからでしょう。介護福祉士には、介護下位資格のセミナー講師を兼務している人が多いので、副業すら失うから介護福祉士会はムキになるでしょう」。ボランティア精神を持つ現場スタッフが、安い給料でも過酷な労働をこなすことで成り立っている業界であることは確かだ。