これは“ブーメラン”か!? 昨年大みそかの「第66回NHK紅白歌合戦」は、第2部(午後9時~11時45分)の関東地区平均視聴率が前年比3・0ポイント減の39・2%で、2部制となった1989年以前も含めて記録の残る1962年以降で最低を記録した。第1部(午後7時15分から1時間40分)も同34・8%(ともにビデオリサーチ調べ)と前年から0・3ポイント落とす歴史的惨敗。目玉がないと言われた紅白だったが、それでいて報道陣に非協力的。現場に詰め掛けた報道各社のほとんどから大ブーイングの嵐が巻き起こった――。

 歴代最低だったのは視聴率だけではなかった。放送が始まる前から目玉がないと言われ続け、多くの報道陣が「何か記事になるものを!」と躍起になって取材に走り回ったが、NHKのあまりにも非協力的な姿勢に各社ブチ切れだ。

 最初に飛び込んできたのが、例年、紅白本番終了後に行われる打ち上げの場の取材禁止通達だった。

「出演者サイドからNGが出たから取材できないというんです。毎年恒例のことなのに、なぜ突然って感じですよ。誰がNGを出したのか、各社が血眼になって探っても全く名前が出てこない。一部では、2年連続の大トリを務めた松田聖子さん(53)がNGを出したと濡れぎぬを着せられそうになりましたが、本当に出演者サイドからNGが出たのか疑わしい。NHKが出演者のせいにして報道陣を閉め出したっていうのが共通認識ですよ」(報道関係者)

 例年、打ち上げ取材は放送終了後の貴重な声を聞ける場となっている。そこでの取材は翌日以降の報道にも反映する大切なものだ。

 NHKの報道陣に対する非協力的姿勢は“紅白卒業”を宣言した森進一(68)のインタビュー取材の場を設けなかったことにも表れた。これには各社から「目玉がない紅白で数少ない話題なのに、なぜNHKは取材をセッティングしないのか?」という不満の声が噴出。

 2014年の紅白で森自身が“紅白卒業論”を展開して話題になっただけに、最後の出演となる森の生の声を聞きたい報道陣は多かったが、実現しなかった。これはお茶の間の森ファンにとっても悲劇的なことだ。

 それだけではない。NHKが報道陣を締め出そうとする動きには常軌を逸したものがあった。リハーサルでの取材エリアが著しく制限されたばかりか、当然のように大多数の報道陣を本番取材から締め出したのだ。本番取材の締め出しは14年に初めて行われ、その理由は「取材エリアに本番で映る8Kスーパーハイビジョンテレビがあるから」というものだった。つまり報道陣はテレビの邪魔になるという信じられない理由だった。では今年はなぜ締め出す必要があったのか? その理由をNHK広報担当者に聞くと「総合的判断」の一点張りだった。

 しかし、そもそも本番取材ができないことは取材要項に書かれていないばかりか、本紙が質問するまで口頭での説明もないままだった。14年はリハーサル取材の前に説明があっただけに、今回はなぜ説明しなかったのか疑問が残る。

 この点を広報担当者に追及すると、なんと返ってきた言葉は「取材要項には『リハーサル取材のお願い』と書いてあるだけで『本番』とは書いていない。したがって本番取材は(今年は)もともとお願いしていません」という。これにはNHK内部からも「国民的音楽番組という神話にあぐらをかいているんですよ」と、現広報部の“殿様体質”を嘆く声も出ている。

 それはそうと、本番取材について説明がないままでは、14年が特別措置で15年は(本番取材は)大丈夫だろうと多くの媒体が思うのも当然だろう。だが、その点についても「説明しなかったこちらが悪いというのですか? 疑問に思ったらそちらから聞いてくれれば教えましたよ!」と上から目線の回答だ。国民の受信料によって運営されているNHKの広報担当者の口から、このような答えが返ってきたことには驚かざるを得ない。

 本番取材からの締め出しを食らった報道陣から「ウチらに放送前に盛り上げるだけ盛り上げさせたら、あとはお払い箱ってことなんでしょう」という嫌みまで飛び出した今回の紅白。脱却を目指しながら目立ったマンネリ感に、出演者の持ち味も出せなかった上に報道陣に対してこの対応では…。

 今後も同じような状況が続くならば、歴代最低視聴率を更新し続ける羽目になるだろう。